11.林由紀子 作品集 『ペルセポネー 回帰する植物の時間』

 11.林由紀子 作品集 『ペルセポネー 回帰する植物の時間』

林由紀子 作品集

 11.『ペルセポネー 回帰する植物の時間』-

2020年は林由紀子さんの銅版画蔵書票集『プシュケの震える翅』を発行してからちょうど10年目という節目の年に当たります。そこでその後制作した蔵書票はもちろん、銅版画、鉛筆画、ペン画など林さんの全貌を知ることができる作品集を出そうと計画しました。出版計画書(案)を作って三島へ赴き、林さんに提出したのが2017年5月のことです。この時は、林さんだけでなくギャラリーCasablancaの勝呂希枝子さんも一緒に、いつも行く三島名物のうなぎ屋さんで昼食をとった後、林さんのアトリエに向かいました。

今回の作品集に掲載する作品は、蔵書票、銅版画、鉛筆画とペン画を予定していました。まず蔵書票を見せてもらったところ、その全てに手彩色が施されていて大変驚きました。『プシュケの震える翅』収載の蔵書票にも、もちろん手彩色がされていましたが、まるで別の作品のように新鮮に思えました。当初、『プシュケの震える翅』に掲載した蔵書票は省く予定でしたが、美しく手彩色された蔵書票を見たら、再度掲載したいという欲求が膨らんできました。林さんの愛好家も喜ぶことは間違いないと確信し、すべての蔵書票を掲載することにしました。これらのほか、貼り込み帖にある銅版画作品もほとんどが手彩色されていて、大変見ごたえがありました。

ふとアトリエ内を見渡すと、林さんがイタリアで買ってきたスケッチ帖が目に入ったので何気なくページを開いてみると、そこにはたくさんの花々が色とりどりに描かれていて、とても美しいスケッチ集でした。これらのスケッチの花々は、林さんが作品を生み出す源泉ではないかと思われ、これもぜひ掲載したいと思いました。ただ、かなり大量だったので勝呂さんと一緒に1ページずつめくりながら掲載スケッチを選んでゆきました。

こうして掲載作品の一部は決まりましたが、個展やグループ展に出展した鉛筆画やペン画の記録や画像がほとんど残っていません。画廊を通して所蔵者を特定し掲載許可をもらい作品を撮影のためにお借りしましたが、すべての作品の所蔵者を特定することはできないばかりか、中には画像はあるものの肝心の作品が行方不明というものもあり、結局全作品掲載は断念せざるを得ませんでした。ただ、林さんを通してお願いした伊豫田晃一さんと栁原翔さんから寄稿してもらうことができたのは僥倖でした。さらに林さんがこれまで各方面に書いた原稿の再掲載許可をお願いすると全て快諾を得ることが出来、次第に内容が固まってきました。

掲載作品が決まった時点でページの割り振りを行ったところ、白紙のページや余白の広いページが出てきました。これらのページを埋めるために林さんに急遽装画とカットを依頼しました。すると、あっと言う間に手彩色鉛筆画8点とペン画9点が送られてきました。いつものことですが、林さんの愛好家や版元に対する素早い対応は「職人」を自認するだけあってその潔さに感じ入りました。これらの作品を中扉や章扉等にレイアウトすると、本文の紙面が美しく映え、また本全体が引き締まってきました。

B版の表紙と見返しは新たに描いたペン画と鉛筆画で、どちらも良い出来映えです。林さんの好みで表紙は茶系の、見返しは青系の紙に印刷することにし、3種類の紙で試し刷りをし、決定しました。

さあ次は製本工程だという段階になって、表紙が本文内容とどうもしっくりこない感じがして仕方がありませんでした。ペン画の細かい線が見えてはいるのですが、どうしても表紙の茶系色に負けて鮮明に見えてこないのです。そこで林さんと相談し、表紙のペン画に手彩色してもらい、白系の紙に印刷し直してもらいました。送られてきた試し刷りの色調を見ると断然こちらの方が素晴らしく、これに決定しました。手間と時間が掛かりましたが、気になることをそのままにしてしまうわけにはいきません。お蔭で本文内容に良く合った、美しい表紙になったと自負しています。

B版の製本については、白系の色の表紙にしたことで汚れが目立つ恐れがあるため、保護ビニールをかけることにしました。また、本を収める函(スリップケース)については、縁の部分を、ひらの板紙が薄くなるようにヤスリ掛けをすることで、本を包み込む形になるよう仕上げてあります。そして天地の厚み部分も、丸背の形に沿うように縁部分を丸く型どってあります。この形にする際は、縁部分に革を貼って包むのですが、今回はA版との違いを出すために紙を使っています。革ならある程度伸びるので貼りやすいのですが、紙はまったく伸びないので、きれいに貼って仕上げるのが難しかったと、製本をお願いした恩田則保さんが話していました。

こうして、本書には林さんが1997年から2019年までに制作した蔵書票(154点)、銅版画(71点)、鉛筆画・ペン画(32点)のほか、イタリア製の手漉きノートに描かれた植物画を全ページカラー印刷で掲載することが出来ました。本書の記事は和文、英文併記とし翻訳は蔵書票愛好家の阪本政仁さんにお願いしました。

ところで本書は、日本書籍出版協会と日本印刷産業連合会主催による第54回造本装幀コンクール(2021年6月審査)におきまして、「日本印刷産業連合会会長賞 印刷・製本特別賞」を受賞いたしました。出版社、装幀者、印刷会社、製本者がそれぞれ表彰され賞牌を受けることとなりました。大変嬉しく有り難いことです。これからも初心を忘れないで美しい本造りを実践してゆこうと思っております。

本書特装版に綴じ込む5点の彩色銅版画と27点の彩色鉛筆画のほか、普及版刊行後に確認された作品等全67点の作品を掲載した『補遺集』が、作品所蔵者や画廊の方々からのご協力をいただきながら、このほど完成いたしました。この『補遺集』は特装版と未綴じ版には追加されますが、すでに普及版をお持ちでご希望の方々には実費1,000円(税込)でお分けいたしますのでご連絡ください。

2022年6月に未綴じ版が完成いたしました。恩田則保さんによるスリップケースは、濃い臙脂色の紙クロスで覆われています。この紙クロスは今後製造中止となるため、製造元最後の在庫の品ということになります。恩田さんは紙クロスの色を決めるに当たり、メゾンドネコで開催中の「蔵書票の宇宙 2022」を観展した際、額装されていた林由紀子さんの作品のマットの色にヒントを得た、というお話しです。また、このスリップケースの内側には、恩田さんが制作したマーブル紙が貼られています。本書をスリップケースから取り出して、是非内側を覗いてみてください。 旧知の田中栞さん(日本豆本協会会長)のアドヴァイスにより、未綴じ版本体をスリップケースからスムーズに出し入れするために、そしてジャケットを保護するために紙製のシュミーズを作りました。このシュミーズは版元による製作です。この未綴じ版を利用して、世界に二冊とない自分好みの一冊に製本していただけると、未綴じ版をお届けする版元といたしましては、大変嬉しい限りです。

Photo

B版

C版

A版(特装版)仕様

  • 大きさ:22.0×19.0cm
  • 装幀:平マーブル半革(コーネル)装幀、見返しマーブル紙、三方マーブル染、B版の表紙と見返し及び『補遺集』を綴じ込み、函入り
  • 背タイトル:箔押し
  • 綴じ込み作品:オリジナル手彩色新作銅版画5点、鉛筆画1点
  • 翻訳:阪本政仁
  • 印刷:中野コロタイプ
  • 製本・製函・箔押し・マーブル紙制作:恩田則保
  • 発行部数:限定25部
  • ISBN:978-4-909796-01-1 C0071
  • 頒布予定価格:196,000円(税込)
  • 頒布予定時期:2022年秋

在庫状況

2022年秋頒布予定

B版(普及版)仕様

  • 大きさ:22.0×19.0cm
  • 装幀:丸背紙装幀、函入り
  • 本体背・函タイトル:箔押し
  • 翻訳・印刷:A版に同じ
  • 製本・製函・箔押し:恩田則保
  • 発行部数:限定250部
  • 発行日:2020年7月1日
  • ISBN:978-4-909796-02-8 C0071
  • 頒布価格:36,000円(税込)

在庫状況

発売中

C版(未綴じ版)

  • 大きさ:26.0×21.5cm
  • 装幀:表紙で包まれた未綴じ本、見返し・『補遺集』付き、函入り
  • 表紙背・函タイトル:箔押し
  • 翻訳・印刷・製函・箔押し:B版に同じ
  • 発行部数:限定25部
  • ISBN:978-4-909796-03-5 C0071
  • 頒布予定価格:32,000円(税込)

在庫状況

発売中

10.『 Alphonse Inoue WORKS CATALOGUE RAISONNÉ 』

10.『 Alphonse Inoue WORKS CATALOGUE RAISONNÉ 』

10.『Alphonse Inoue WORKS CATALOGUE RAISONNÉ』

敬愛する3名の作家の蔵書票集を出版することが出来たので、いよいよ作品集の出版に取り掛かることにしました。まずはアルフォンス イノウエさんの作品集です。

アルフォンスさんがこれまで制作した銅版画、水彩画、鉛筆画、ペン画、年賀状など可能な限りすべてを収録した作品集にしたいと思いました。これはアルフォンスさんも全く同じ考えでしたので、二人とも大いにやる気が出てきました。

レイミア プレスがワイアートと共同出版した『夢の半周』印刷版をアルフォンスさんが見て、「この印刷は実にきれいに出来ている」と話されていたことを思い出したので、印刷は岡山の中野コロタイプを第一候補とすることにしました。そこでワイアートギャラリーオーナーの樋口佐代子さんに紹介してもらい、レイミア プレスでこれまで出版した書籍を持参して、岡山に中野コロタイプを訪ねました。そして私が掲げる3つのモットーについて説明し、私の本造りに関する考え、気持ち、購読者の望みなどとともに美しい本を出版したい旨を話したところ、充分理解してもらいましたので、心強い気持ちで帰宅しました。

印刷所は決まりましたが肝心の製本を誰に頼むかという大きな問題が残りました。今回はオリジナル銅版画7点を綴じ込むA版、1点を綴じ込むB版、普及版としてのC版、未綴じ版の4種を出版する計画です。

A版の製本は、『ユメノユモレスク』特装版をお願いしたfrgmの一員である羽田野麻吏さんに是が非でもお願いしようとアトリエを訪ねました。2017年11月のことです。今回は一人で30冊の製本を担当することになるために、羽田野さんからはすぐには返答をいただけませんでしたが、翌2018年4月に特注色の革や染め紙の制作スケジュールなど再度綿密な打ち合わせをしました。そして大変嬉しいことに、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催前に納品する、ということで引き受けてもらうことが出来ました。
羽田野さんからは進捗状況の報告をたびたびいただきました。製本に取り掛かる段階で少し問題になったのが、アルフォンスさんの版画紙です。版画は薄い雁皮紙に刷られ、それを厚手の版画紙に貼った状態で届いていますが、その版画紙が少し波打っているのです。1枚、2枚を綴じるのでしたらそのままの状態でも問題ないのですが、まとめて7枚綴じるとなると版画紙の波打ち状態が目立ってしまいます。そこで羽田野さんから「波打ちを解消したい」との連絡が入りました。美しく仕上げるにはやはり水張りしかなさそうです。200枚を超える手彩色入り版画の水張り作業にはかなりの手間が掛かりそうですが羽田野さんにお願いすることにしました。その結果、版画を全く損ねることなくきれいに波打ちが解消されていました。このような所にも羽田野さんの「美しい本を造りたい」という真摯な思いを強く感じました。

B版、C版、未綴じ版については、色々考えあぐねていた折に、東京製本倶楽部のワークショップが江東区大島の篠原紙工で開催され、私も参加しました。たまたま旧知の田中栞さんと谷口里香さんもいて、帰路田中さんから「今から帳簿製本の職人さんに会うけれど、一緒に行きませんか」と誘われました。以前、田中さんから、しっかりした帳簿製本の技法について話を聞き興味を持っていたので、2人に同行することにしました。そうして訪ねたのが恩田則保さんの製本所です。恩田さんは帳簿製本3代目職人ということで、自分を「職人」と呼んでいます。祖父から手ほどきを受けながら札幌へ修行に行き、現在は1人で製本を業としているとのことでしたが、その話は面白く、また実に真面目に取り組む骨のある職人だということが感じられました。手作業による丁寧で頑丈な本造りは大いに魅力的です。2018年9月のことです。
その後10月と11月に恩田製本所を訪問したほか、翌年3月には東京製本倶楽部主催のマーブル制作ワークショップが恩田さんを講師として企画されたので参加しました。通常、製本家はマーブル染めにまでは手を出そうとしませんが、こうした分野にまで新たに挑戦しようとする恩田さんの人となりをさらに深く知る貴重な機会となりました。そして次第に、今後の製本は恩田さんにお願いしたいという気持ちが強くなりました。愉しい本造りをするには誰と一緒にやるのが良いかと考えた結果、恩田さんと一緒にやろうと決心したのです。

これでやっとすべての版種の製本についての私の心配が解消しました。

次に解決しなければならないことは、英詩、仏詩の翻訳の著作権です。今回は原詩の他に訳詩も掲載しますので、翻訳者の許可を得る必要があります。この対象者は10名となります。著作権の保護期間は、わが国では著作者の没後50年となっています。没後50年を過ぎた人は2名ですから残り8名の方に連絡を取る必要があります。8名の著作権者もしくは著作権継承者について詳しく調べた結果、連絡が取れた方、既に鬼籍に入られている方、住所がわからない方などまちまちでした。著作権者や著作権継承者、日本文芸家協会などからおおむね掲載の許可を得ることが出来ましたが、2018年9月に始めたこの調査は、残念ながら4名の方々と連絡がつかないままで2019年1月、印刷終了直前に終わりました。ご協力いただいた関係者には大いに感謝いたしております。

作品集企画を本格的に進めるため、アルフォンスさんを神戸に訪ねたのは2018年7月12日のことです。アトリエには中野コロタイプの古市久志さんが来ていて、掲載する作品のチェックをしていました。アルフォンスさんと私は古市さんの車で作品を携えて岡山に行きました。印刷所では窓口の古市さんから画像監修の布下創一郎さんと本文入力・デザイン担当の坂井洋子さん、佐々木朋子さんを紹介されました。事前にアルフォンスさんと共に目次、作品レイアウト、作品リスト、活動年譜など内容をまとめていましたので、それらが入っているUSBを渡し、とにかく船出をすることができました。

それから数か月して初校刷りが届きました。作品のレイアウトはアルフォンスさんに任せて私はもっぱら和文と英文の文章チェックを行いました。前回の蔵書票集と同様、アルフォンスさんの色刷り、レイアウトへのこだわりは相当なものでした。アルフォンスさんから送られてきた修正入りの校正紙を見ると、大きな用紙に刷られた校正紙を自分で裁断し、本のように綴じた状態にして校正されていました。このように綴じるのはかなりの時間を要したはずですが、「本の状態にしなければ、レイアウトは思い通りにできない」というアルフォンスさんの強いこだわりが感じられました。この仮綴じ本には、『蔵書票カタログレゾネ』の時と同様に、それこそありとあらゆるページに細かい指示が書き込まれていました。このような校正刷りの遣り取りが何回も繰り返えされましたが、印刷所の担当者はかなり鍛えられるだろうなと思うほどでした。

今回の作品集では、アルフォンスさんの2人の友人に協力をお願いしました。ぜひ掲載したいと考えた書影の撮影をカメラマンの生田浩さんに、表紙デザインと日夏レイさんの詩集『シメール』掲載作品のデータ処理を花房秀行さんにお願いしました。

書影の撮影はアルフォンスさんの友人宅の広い居間を借りて、アルフォンスさんと私が持ち寄った書籍を1冊1冊生田さんがテーブルの上に乗せ、事前にアルフォンスさんが描いていたレイアウトに沿って配置しライティングを整え、撮影しました。デジタルカメラを使用したので、1冊の書籍を何回も撮影し合成して作成した画像もありました。今の撮影技術の進歩は私の想像をはるかに超えています。そうしてアルフォンスさんも満足する大変素敵な書影が完成したのでした。

表紙のデザインは花房さんにお願いしましたが、前作の蔵書票集の表紙と同様、アルフォンスさんの作品をコラージュしたデザインとなりました。これはアルフォンスさんの希望によるものでしたが、私も大いに賛成しました。

本書はアルフォンスさんがこれまでに制作した銅版画、水彩画、鉛筆画、ペン画、年賀状など235点の作品と書影をカラー印刷し、全作品のリストを掲載した英文併記のカタログ レゾネです。翻訳は林由紀子さんの『プシュケの震える翅』と同じ畏友井上清紘君とロンドン在住のM.R.氏にお願いしました。

今回の「カタログ レゾネ」には2つの特徴があります。
1つは、全ページにわたってアルフォンスさんが自らレイアウトしたことです。1ページ1ページ、作家の目が紙面の隅々にまで行きわたっています。もう1つは、アルフォンスさんが愛読するイギリスやフランスの詩や小説から湧いてきたインスピレーション、制作のきっかけとなった様々なエピソード、作品に対する強い思い入れなどが、作家自らの手で綴られていることです。つまり本書は、手に取った読者がアルフォンスさんの作品世界に直接触れることが出来る贅沢な1冊となっています。

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​A版

B版

C版

共通本文

A版 仕様

  • 大きさ:27.0×22.0cm
  • 製本仕様:綴じ付け製本、総革装、角革装(平マーブル)
  • アルフォンス イノウエによるオリジナル銅版画7点を綴じ込む
  • 製本:atelier CORYLUS 羽田野麻吏
  • 革:山羊革タンニン鞣し特注色
  • 表紙マーブル紙:ジェンマ ルイス
  • 見返し・スリップケース染め紙:佐々木久美子
  • 箔押し:中村美奈子
  • 翻訳:井上清紘、マレー ローゼン
  • 印刷:中野コロタイプ
  • 発行部数:限定30部
  • 発行日:2020年1月29日
  • ISBN:978-4-9906508-6-5 C0071
  • 頒布価格:302,500円(税込)

在庫状況

完売

未綴じ版 仕様

  • 大きさ:29.5×24.0cm
  • 製本仕様:未綴じ、函入り
  • 製函:恩田則保
  • 発行部数:限定30部
  • 発行日:2019年1月29日
  • ISBN:978-4-9906508-9-6 C0071
  • 頒布価格:33,000円(税込)

在庫状況

完売

B版 仕様

  • 大きさ:27.0×22.0cm
  • 製本仕様:糸かがり綴じ、丸背布平紙装幀本、函入り
  • アルフォンス イノウエによるオリジナル銅版画1点を綴じ込む
  • 製本・製函:恩田則保
  • 発行部数:B-1、B-2、B-3それぞれ限定30部
  • 発行日:2019年1月29日
  • ISBN:978-4-9906508-7-2 C0071
  • 頒布価格:63,250円(税込)

在庫状況

完売

C版 仕様

  • 大きさ:27.0×22.0cm
  • 製本仕様:糸かがり綴じ、角背平紙装幀本、函入り
  • 製本・製函:恩田則保
  • 発行部数:限定300部
  • 発行日:2019年1月29日
  • ISBN:978-4-9906508-8-9 C0071
  • 頒布価格:41,250円(税込)

在庫状況

販売中

09.『夢野久作短篇集‐ユメノユモレスク』

09.『夢野久作短篇集‐ユメノユモレスク』

09.『夢野久作短篇集-ユメノユモレスク-』

銅版画家の宮島亜紀さんは大の夢野久作ファンで、以前から久作の本の出版に関わることを夢見ていました。久作没後80年の日が次第に近づいてきた2015年のある日、彼女はとうとう「久作の本を出す!」と決心しました。彼女が選んだ4つの短編に、自分を含めた4人の銅版画家に依頼して新たに挿画を描いてもらうという企画を立案し、福岡の出版社・書肆侃侃房に話を持ち込み、早速実行に移しました。宮島さんはアルフォンス イノウエさん、杉本一文さん、林由紀子さんをそれぞれアトリエに訪ねて本書の企画意図を説明し、挿画制作の依頼をしたところ、皆さんから快諾を得ることができました。林さんを三島に訪ねて歓談するうちに、林さんから「この本のタイトルは『ユメノユモレスク』ではどうかしら」と提案され、即座に書名も決まりました。

編集者は、書肆侃侃房社長の田島安江さん、沢田安史さん、宮島亜紀さん、佐々木孝さんの4名と末席に私が加わり、久作没後80年の2016年3月11日の出版を目指して進めることになりました。編集会議で皆が最も悩んだのが本文の表記方法です。若い読者にも読みやすい新字新仮名遣いにするか、あるいは原作が発表された当時と同じ旧字旧仮名遣いにするかです。激論の結果、旧漢字で歴史的仮名遣いの表記を採用することになりました。校訂担当の沢田さんが中心となり、私も協力して、現代表記の作品を旧字旧仮名遣いに変更したゲラのやり取りを数回繰り返し、何とか期日に間に合わせることができました。

普及版は2016年3月11日が発行日と決まって印刷・製本が順調に進み、ちょうど神戸で開催中のアルフォンスさんの展覧会場でお披露目販売することになりました。

特装版も、当初は普及版を発行したのと同じ書肆侃侃房が発行社となり、製本が水仁舎、レイミア プレスは協力という立場で、オリジナル銅版画を4点綴じ込んでB5判の限定30部を制作する構想でした。しかし2015年11月、宮島さんから相談があり、書肆侃侃房は編集担当として、そしてレイミア プレスが発行元になる形で特装版発行をして欲しいと依頼されました。これまで普及版発行に協力してきたことと、綴じ込みの版画を制作している4名の作家とは長い交流があることなどを踏まえ、承諾することとしました。

特装版は普及版とは仕様を全面的に改め、判型も本文用紙も変え、ページのマージン(余白)を広くとって旧字旧仮名遣いの組版を更に徹底しました。

特装版の製本について、水仁舎と何度も打ち合わせをしましたが、幾つかの問題がどうしても解決に至らず、水仁舎での製本を断念せざるを得ない状況になりました。途方に暮れた私の頭に浮かんだのは、以前から個人的にルリユールをお願いしていた羽田野麻吏さんのことでした。彼女は、Les fragments de Mという、3名の製本家と1名の箔押し師からなるルリユール制作ユニットのメンバーの1人です。羽田野さんに、他のメンバーとも検討してもらった結果、製本を引き受ける旨の返事をいただき、本当にホッとしました。

製本に1年という時間を要するために、予約者の皆さんには製本の途中経過をお知らせすることにしました。そのために羽田野さんのアトリエを3回訪問し、作業工程を写真付き解説書に仕上げて送ったところ大変好評でした。私も知らない製本工程が多くあり、大変勉強になりました。

そして当初の予定通りの期日に frgm の皆さんがそれぞれ製本した特装版を羽田野さんのアトリエに持ち寄り、 frgm 専用の保護函に納め、検品後に予約者の皆さんに送本し、特装版の発行が無事に完了しました。2017年3月のことです。
後日4名の作家、frgmのメンバー、出版関係者、特装版購入者総勢21名が東京に集まり、本書を囲んで懇親会を開き、大変愉しいひと時を過ごしました。

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特装版仕様

  • 大きさ:B5判、25.7×18.2cm
  • 装幀:半革装幀(両袖装、コーネル装、額縁装)、平マーブル紙でスリップケース  入り
  • 綴じ込み作品:アルフォンス イノウエ、杉本一文、林由紀子、宮島亜紀のオリジナル版画
  • 本文表記:旧字歴史的仮名遣い
  • 校訂:沢田安史
  • 編集:田島安江、宮島亜紀、佐々木孝
  • DTP:黒木留実
  • 印刷:アロー印刷
  • 製本:Les fragments de M
  • 発行所:レイミア プレス
  • 発行部数:限定30部
  • 発行日:2016年3月11日
  • ISBN:978-4-9906508-5-8 C0093
  • 頒布価格:181,500円(税込)

在庫状況

完売

未綴じ版

  • 内容:特装版と同じ
  • 製函:恩田則保
  • オリジナル銅版画の付属は無し
  • 発行所:レイミア プレス
  • 頒布数:限定30部
  • 頒布価格:19,800円(税込)

在庫状況

在庫僅少

普及版

  • 大きさ:四六判、18.8×13.0cm
  • 装幀:丸背上製本、宮島亜紀装幀の表紙とカバー
  • 綴じ込み扉絵:アルフォンス イノウエ、杉本一文、林由紀子、宮島亜紀
  • 本文表記:旧字歴史的仮名遣い
  • 解説・校訂:沢田安史
  • 編集:田島安江、宮島亜紀
  • 編集協力:江副章之介、佐々木孝
  • 発行所:書肆侃侃房
  • DTP・印刷:特装版に同じ
  • 発行日:2016年3月11日
  • ISBN:978-4-86385-217-4 C0093
  • 頒布価格:4,180円(税込)

在庫状況

発売中

08. “ ALPHONSE INOUE EX LIBRIS CATALOGUE RAISONNÉ ” – アルフォンス イノウエ 蔵書票 カタログ レゾネ –

08. “ ALPHONSE INOUE EX LIBRIS CATALOGUE RAISONNÉ ” – アルフォンス イノウエ 蔵書票 カタログ レゾネ –

08. 『ALPHONSE INOUE EX LIBRIS CATALOGUE RAISONNÉ』

– アルフォンス イノウエ 蔵書票 カタログ レゾネ –

本書の企画を開始した2013年当時、私はアルフォンスさんが制作した蔵書票の全貌を知りませんでした。アルフォンスさんの作品が大好きな私としては、その未知の世界を明らかにしたいという欲望が湧くのは当然のことです。神戸のアトリエを訪ねて、「蔵書票のカタログレゾネを出版したい」とお話ししたところ、即座に快諾していただきました。銅版画詩画集『夢の半周』オリジナル版の出版から5年が経っていました。

すべての蔵書票を見せてもらったところ、まだ見たことのない蔵書票が続々と出てきました。しかも票主が決まっていないものがたくさんあり、これは私ばかりかアルフォンスさんの蔵書票愛好家なら誰しもがワクワクしてしまうことです。このレゾネ本を手にした愛好家はこぞって蔵書票を注文するのではないかと思いました。

アルフォンスさんは蔵書票をファイリングしているだけでなく、作品番号、タイトル、票主名、サイズ、制作年などを記入したリストも揃えていました。これがアルフォンスさんの性格なのだと感心した次第です。

1974年から2013年までの40年間に制作された全216点の蔵書票を掲載するに当たり、アルフォンスさんは数点がエロティックであることから掲載を躊躇していました。蔵書票というものは極めて個人的な版画なので、世の中にはエロティック蔵書票がたくさんあります。特に海外の蔵書票にはハードなものをよく見かけることがあります。それに比べてアルフォンスさんの蔵書票はエロティックとはいってもそれほどハードではありません。しかし今回は、たとえエロティックな蔵書票であろうと、アルフォンスさんのイマジネーションから創造されたれっきとした作品です。従ってすべての蔵書票を掲載したいと伝えると、私の考えを受け入れてもらえました。

お借りした蔵書票を全て自宅のプリンターでスキャンし、水仁舎の北見俊一さんに渡してレイアウトしてもらいました。レイアウト作業が終了しプリントアウトしたゲラを私がまず校正し、その後アルフォンスさんに見てもらいました。作業はデジタルですから、細かい線や点の具合を観察し、画面に描かれている少女の顔のゴミの削除や切れている線の継ぎ足し、蔵書票の位置の修正など、多くの細かい指示がなされました。これは、きれいにレイアウトされ、美しく印刷されてこその作品集だという、アルフォンスさんの画家としてのこだわりだと思います。こうした作業を何度も地道に繰り返していくうちに、次第に美しいページに仕上がっていくのが目に見えて明らかになってくるのでした。

特装版に綴じ込むオリジナル蔵書票を、アルフォンスさんは当初50枚くらいにしたいと希望していました。たくさん綴じ込むのは愛好家にとっては有り難いことなのですが、それだけ価格が高くなってしまい、結局購入できない愛好家が出てくるのではないか、と危惧しました。何回か打ち合わせをした結果、最終的には20枚綴じ込むことに落ち着きました。この特装版は25部刊行の予定でしたが、いざ予約を募集したところ予想を超える申し込みがあって、急遽30部の発行となりました。

普及版の装幀仕様でアルフォンスさんと私の好みが異なっていたため、双方の好みを尊重して角背と丸背2種類の異装本を制作することになり、更には同じ色の布を充分に調達することが出来なかったために、丸背本は背布の色が白と灰の2種類になりました。

Photo

特装版

特装版綴込み版画

普及版

共通本文

 

特装版仕様

  • 大きさ:B5判変形、19.5×18cm
  • 装幀:半革コーネル装幀で、使用する革は黒系、濃紺系、臙脂系のカーフ。平はマーブル紙貼込み。マーブル紙貼込み函入り。背には作家名と書名を金箔押し
  • 綴じ込み作品:オリジナル蔵書票20点
  • 組版:中島悠子
  • レイアウト:北見俊一
  • 印刷:イニュニック
  • 製本:北見俊一
  • 発行部数:限定30部
  • 発行日:2014年7月3日
  • ISBN:978-4-9906508 3-4 C0071
  • 頒布価格:236,500円(税込)

普及版仕様

  • 大きさ:B5判変形、19.5cm×18cm
  • 装幀:丸背布継貼装と角背紙貼装の2種、本文糸かがり綴じ、表紙はアルフォンス イノウエ監修デザイン、函入り。背に書名の題箋貼りまたは箔押し
  • 表紙デザイン:猪口耕作
  • 組版・レイアウト・印刷・製本:特装版と同じ
  • 発行部数:丸背白布限定100部、丸背灰布限定100部、角背限定50部
  • 発行日:2014年7月3日
  • ISBN:978-4-9906508-4-1 C0071
  • 頒布価格:22,000円(税込)

在庫状況

完売

07.『坂東壯一蔵書票集 – SOICHI BANDO EX LIBRIS – 』

07.『坂東壯一蔵書票集 – SOICHI BANDO EX LIBRIS – 』

07.『坂東壯一蔵書票集 - SOICHI BANDO EX LIBRIS – 』

敬愛する版画家の一人である坂東壯一さんの蔵書票集を出版することは、林由紀子さんの『プシュケの震える翅』を出版した時から決まっていたようなものです。

坂東さんが出版企画を快諾してくれましたので、まずはそのリスト作りに取り掛かりました。未来工房、桜華書林、緑の館、つくし館などから出版されている坂東さんの蔵書票集や季刊「銀花」とクリフォードギャラリーの票主募集の情報に加え、坂東さんからお借りした制作年と票主の氏名が記載されている1冊のノートを手掛かりにリスト作りの開始です。これだけの資料があれば十分だろう、と思っていましたがこれが大きな間違いで、リストの完成にはまだほど遠い状態でした。例えば、蔵書票は存在し票主もわかっているのですが、票主の氏名の漢字やタイトルが確認できません。そこで情報を得るために日本書票協会事務局を訪ね、所蔵の資料を閲覧し、会員の情報も教えてもらいました。そして坂東さんに蔵書票を作ってもらったと思われる愛好家たちに作品タイトルと制作年を教えてほしいむねお便りや電話で連絡したところ、続々と回答が届きました。中には既に鬼籍に入られた方がいらっしゃったり、あて名人住所不明で封書が戻ってきたり、あるいはかなりの年配の票主に確認の電話を掛けたところ、そのような覚えは一切ない、何かの間違いだ、といわれましたが、ご家族の方の話では票主に間違いはない、ただ本人は認知症なので覚えていないようだ、ということがあったりしました。このようにして多くの情報をもとに作品リスト作りが進んでゆきましたが、これだけで3年ほどの時間を要してしまいした。しかしおかげで多くの方々の協力を得て、1977年から2014年の間に制作された180点の蔵書票のデータが完成しました。

坂東さんに本書へ寄稿してもらいたいと思っていたところ、2013年8月、現代蔵書票作家本シリーズを発行しているポルトガルのモタ ミランダさんから「日本の作家を誰か紹介してほしい」という依頼メールがありました。私はすぐに坂東さんを紹介するむね返事をし、その記事を書くために坂東さんと横浜駅前のホテルの喫茶室で会い、3時間半にわたってインタビューを行いました。内容は、小さい頃や大学時代のこと、影響を受けた人やできごと、版画の世界に入ったきっかけ、作品テーマの対象等々、多岐にわたるものでした。これは2015年に発行された “CONTEMPORARY INTERNATIONAL EX-LIBRIS ARTISTS”に掲載されましたが、本書にもこの時のインタビューの内容をベースにして坂東さん自身に執筆してもらい、「銅版画、そして蔵書票への想い」と題して収めることができました。これらの文章を読むと、坂東さんの人柄にますます惹きつけられてしまいます。

本書の構成としては、既に出版されている8冊の蔵書票集と2回の票主募集を時系列で掲載し、その後ろにこれらに掲載されていない単品の蔵書票を掲載する、という方針で進めました。そこで蔵書票集と票主募集の資料の写真を中扉として掲載することを決め、カメラマンの末弟にそれらの撮影を依頼しました。スタジオで撮影に立ち会ったところ、カメラアングル、ライティング、対象物のレイアウト、画面のトリミング等々、さすがにプロのカメラマンのやり方は違う、と感心させられることが多い現場でした。お蔭で素敵な中扉写真が出来ました。末弟には感謝です。

新たな蔵書票5点を綴じ込んだ特装版も制作することになり、5名の票主と希望のテーマを募集し抽選により票主を選びました。後日、票主の希望どおりの素敵な蔵書票が出来上がってきました。坂東さんに、作品ができあがったあと蔵書票のデッサン画はどうするのかを聞いたところ、「廃棄する」という信じられない答えが返ってきました。あわてて、廃棄される前に5点のデッサン画をもらい受け、票主にプレゼントしたところ、大変喜ばれました。

普及版は丸背布装幀ですが、3種類の色の布にすることにしました。それは、坂東さんの作品イメージにマッチした黒色、濃紺色、臙脂色です。表紙には坂東さんに描いてもらったロゴを金型で金箔押しすることにしました。特装本は、ひらにマーブル紙を貼り、背とコーナーに革を貼る角革装幀としました。

Photo

特装版

普及版

特装版仕様

  • 大きさ:B5判、25.7×18.2cm
  • 装幀:半革コーネル装幀で革は黒系、濃紺系、臙脂系のカーフ。平はマーブル紙貼り込み。マーブル紙貼り込み函入り。背には作家名と書名の“ SOICHI BANDO EX LIBRIS ”を金箔押し
  • 綴じ込み作品:新作蔵書票5点
  • 版画集撮影:江副良介
  • 組版:中島悠子
  • レイアウト:北見俊一
  • 印刷:イニュニック
  • 製本:北見俊一
  • 発行部数:限定25部
  • 発行日:2014年3月15日
  • ISBN:978-4-9906508-1-0 C0071
  • 頒布価格:176,000円(税込)

在庫状況

完売

普及版仕様

  • 大きさ:B5判、25.7×18.2cm
  • 装幀:丸背全面布貼装製本、本文糸かがり綴じ、函入り、カラー164頁、表紙の布は黒系、濃紺系、臙脂系の3種、背に作家名と書名が題箋貼り又は箔押し
  • 版画集撮影・組版・レイアウト・印刷・製本:特装版と同じ
  • 発行部数:限定250部
  • 発行日:2014年3月15日
  • ISBN:978-4-9906508-2-7 C0071
  • 頒布価格:11,000円(税込)
  • 黒系と臙脂系の布装幀本は完売、濃紺系は残部僅少

在庫状況

在庫僅少