08. 『ALPHONSE INOUE EX LIBRIS CATALOGUE RAISONNÉ』
– アルフォンス イノウエ 蔵書票 カタログ レゾネ –
本書の企画を開始した2013年当時、私はアルフォンスさんが制作した蔵書票の全貌を知りませんでした。アルフォンスさんの作品が大好きな私としては、その未知の世界を明らかにしたいという欲望が湧くのは当然のことです。神戸のアトリエを訪ねて、「蔵書票のカタログレゾネを出版したい」とお話ししたところ、即座に快諾していただきました。銅版画詩画集『夢の半周』オリジナル版の出版から5年が経っていました。
すべての蔵書票を見せてもらったところ、まだ見たことのない蔵書票が続々と出てきました。しかも票主が決まっていないものがたくさんあり、これは私ばかりかアルフォンスさんの蔵書票愛好家なら誰しもがワクワクしてしまうことです。このレゾネ本を手にした愛好家はこぞって蔵書票を注文するのではないかと思いました。
アルフォンスさんは蔵書票をファイリングしているだけでなく、作品番号、タイトル、票主名、サイズ、制作年などを記入したリストも揃えていました。これがアルフォンスさんの性格なのだと感心した次第です。
1974年から2013年までの40年間に制作された全216点の蔵書票を掲載するに当たり、アルフォンスさんは数点がエロティックであることから掲載を躊躇していました。蔵書票というものは極めて個人的な版画なので、世の中にはエロティック蔵書票がたくさんあります。特に海外の蔵書票にはハードなものをよく見かけることがあります。それに比べてアルフォンスさんの蔵書票はエロティックとはいってもそれほどハードではありません。しかし今回は、たとえエロティックな蔵書票であろうと、アルフォンスさんのイマジネーションから創造されたれっきとした作品です。従ってすべての蔵書票を掲載したいと伝えると、私の考えを受け入れてもらえました。
お借りした蔵書票を全て自宅のプリンターでスキャンし、水仁舎の北見俊一さんに渡してレイアウトしてもらいました。レイアウト作業が終了しプリントアウトしたゲラを私がまず校正し、その後アルフォンスさんに見てもらいました。作業はデジタルですから、細かい線や点の具合を観察し、画面に描かれている少女の顔のゴミの削除や切れている線の継ぎ足し、蔵書票の位置の修正など、多くの細かい指示がなされました。これは、きれいにレイアウトされ、美しく印刷されてこその作品集だという、アルフォンスさんの画家としてのこだわりだと思います。こうした作業を何度も地道に繰り返していくうちに、次第に美しいページに仕上がっていくのが目に見えて明らかになってくるのでした。
特装版に綴じ込むオリジナル蔵書票を、アルフォンスさんは当初50枚くらいにしたいと希望していました。たくさん綴じ込むのは愛好家にとっては有り難いことなのですが、それだけ価格が高くなってしまい、結局購入できない愛好家が出てくるのではないか、と危惧しました。何回か打ち合わせをした結果、最終的には20枚綴じ込むことに落ち着きました。この特装版は25部刊行の予定でしたが、いざ予約を募集したところ予想を超える申し込みがあって、急遽30部の発行となりました。
普及版の装幀仕様でアルフォンスさんと私の好みが異なっていたため、双方の好みを尊重して角背と丸背2種類の異装本を制作することになり、更には同じ色の布を充分に調達することが出来なかったために、丸背本は背布の色が白と灰の2種類になりました。
特装版仕様
- 大きさ:B5判変形、19.5×18cm
- 装幀:半革コーネル装幀で、使用する革は黒系、濃紺系、臙脂系のカーフ。平はマーブル紙貼込み。マーブル紙貼込み函入り。背には作家名と書名を金箔押し
- 綴じ込み作品:オリジナル蔵書票20点
- 組版:中島悠子
- レイアウト:北見俊一
- 印刷:イニュニック
- 製本:北見俊一
- 発行部数:限定30部
- 発行日:2014年7月3日
- ISBN:978-4-9906508 3-4 C0071
- 頒布価格:236,500円(税込)
普及版仕様
- 大きさ:B5判変形、19.5cm×18cm
- 装幀:丸背布継貼装と角背紙貼装の2種、本文糸かがり綴じ、表紙はアルフォンス イノウエ監修デザイン、函入り。背に書名の題箋貼りまたは箔押し
- 表紙デザイン:猪口耕作
- 組版・レイアウト・印刷・製本:特装版と同じ
- 発行部数:丸背白布限定100部、丸背灰布限定100部、角背限定50部
- 発行日:2014年7月3日
- ISBN:978-4-9906508-4-1 C0071
- 頒布価格:22,000円(税込)
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完売