『ユメノユモレスク』

『ユメノユモレスク』

『ユメノユモレスク』

福岡の書肆侃侃房から出された『ユメノユモレスク』普及版とは本文紙質と大きさを変えるとともに本文ページのマージンを広くとり、アルフォンス イノウエさん、杉本一文さん、林由紀子さん、宮島亜紀さんのオリジナル版画を綴じ込んだ特装版をレイミア プレスから30部出版しました。その未綴じ版を利用して、挿画のオリジナル銅版画だけではなく、この4名の作家に作ってもらった私の名入りの蔵書票と銅版画作品、関係者の署名紙、その他普及版のジャケット、表紙、帯、見返し紙などの関係資料全てを綴じ込んだ版元版として、frgmの平まどかさんにルリユ―ルをお願いしました。

表紙全体が黒山羊革で包まれているために重厚さが感じられますが、表表紙の半分には桜色の手染め装飾紙が貼られていて、華やかさも醸し出している一冊となっています。表紙を開くとワインレッドに染められた仔牛革見返しと和紙の手染めによる遊び紙見返しが、洋と和の心地よい調和を導き出しています。綴じ込まれた版画や資料が多かったためにかなりの厚さになってしまいましたが、本書は手染め和紙が貼られている夫婦函に収まっていて、その装幀といい、大きさといい、重さといい、立派な版元版が出来上がりました。

原本書誌
・著者:夢野久作
・装画:アルフォンス イノウエ、杉本一文、林由紀子、宮島亜紀
・付属作品:装画のオリジナル銅版画全4葉
・発行者:江副章之介
・校訂:沢田安史
・編集:田島安江、宮島亜紀、佐々木孝
・DTP:黒木留実
・印刷所:アロー印刷株式会社
・製本:Les fragments de M
・発行所:レイミア プレス
・サイズ:h304×w215×d15mm
・夫婦函:h324×w230×d27mm
・発行部数:30部
・出版年:2016年3月11日

ルリユ―ル : 平まどか
・綴じ込み作品:4名の作家によるオリジナル銅版画と蔵書票各1葉 計8葉 その他各種版元資料
・仕様:半革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり
・表紙:黒山羊革
・デコール:手染め装飾紙と白仔牛革による嵌め込み装飾
・表紙内側見返し:ワインレッド仔牛革(きき紙)
・見返し:手染め(遊び紙)
・はなぎれ:3色絹糸三段編み
・箔押し:中村美奈子
・サイズ:h261×w194×d44mm
・夫婦函:h279×w208×d53mm
・制作年:2017年

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『旅にしあれば』

『旅にしあれば』

『旅にしあれば』

本書はレイミア プレスからの5番目の出版物です。出版の経緯は「レイミア プレス出版案内」に詳述していますので、ご覧ください。

本書は著者用と私用に11部を吉田八洲夫さんに製本をしてもらいましたが、これらの他に版元本として製本を Les fragments de M(frgm)にお願いしました。このfrgmは3名の製本家と1名の箔押し師のユニットですが、本書の製本は平まどかさんが、箔押しは中村美奈子さんが担当することとなりました。製本仕様は、frgmのホームページに掲載されている「クラッシックスタイルのパッセ カルトン」の定型半革装のうち、私が好きな角革装でお願いすることとしました。

しぼがきれいな黒山羊革とfrgmのための特別染め紙が表紙を彩っており、見返しの濃い焦げ茶模様の染め紙と相俟って、大変落ち着きのある装幀となっています。

原本書誌
レイミア プレス出版案内をご覧ください。

ルリユ―ル : 平まどか
・ルリユ―ル綴じ込み作品:大﨑夏子によるオリジナル水彩口絵、林由紀子による蔵書票
・仕様:半革角革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり(麻紐支持体5本)
・表紙:山羊革と染め紙(corylus bis.)
・見返し:染め紙(corylus bis.)
・はなぎれ:3色絹糸三段編み
・箔押し:中村美奈子
・サイズ:h263×w188×d25mm
・スリップケース:手染め紙貼り h269×w190×d31mm
・制作年:2013年

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『銅版苦楽部』

『銅版苦楽部』

『銅版苦楽部』

1983年、詩人で銅版画家の岩佐なをさんに長男誕生を記念して蔵書票を依頼しました。これが私の蔵書票第一号です。それから現在までに140点の蔵書票を国内外の版画家に作ってもらいました。ところで本書は2010年高輪にある画廊オキュルスで開催中の展覧会で見つけたものです。岩佐さんによる15点の手彩色オリジナル銅版画にタイトルが付けられ、それぞれの版画には鉛筆書きで詩が添えられており、版画の横には色鉛筆や水彩で添え描きされていて実に面白い内容です。版画と添え描きの生き物は皆変な顔をしているのですが、とてもユーモラスで愛らしいのです。しかもこれは岩佐さんが自分で簡易に製本したもので、左端に二つ穴を開け紐で無造作に括ってありました。こんな素敵な本が売れ残っていたのですから私は幸運の持ち主でしょう。何も考えずに、即買いです。この本を見てすぐに思い出したのが岩佐さんに作ってもらった1983年の蔵書票でした。あれから30年後の蔵書票を本書に綴じ込んでルリユ―ルしてもらい、30歳になった長男への贈り物にしようと考えました。二つの蔵書票を比べると、長男が「少年」から「青年」へと成長した顔つきとなっています。彼自身がこのようにしっかりと成長したかどうかは疑問ですが、私は満足して近藤理恵さんに一式をお渡しし、誕生日に間に合うようにルリユ―ルを依頼しました。近藤さんは表紙を可愛くデザインし、見返しに下記のような贈り物のメッセージを箔押ししてくれました。果たして長男は気に入ってくれたでしょうか。
“ TAKURA, FOR YOUR 30TH BIRTHDAY FROM YOUR PAPA, JULY 8, 2013 ” 

原本書誌
・著者:岩佐なを
・付属作品:岩佐なをによるオリジナル銅版画15葉
・発行者:岩佐なを
・装幀&レイアウト:本書全て岩佐なをによる手造り
・発行所:玄工房
・サイズ:約h190×w285×d8mm
・発行部数:1部
・出版年:2010年6月18日 

ルリユ―ル : 近藤理恵
・ルリユ―ル綴じ込み作品:岩佐なをによる蔵書票(票主は江副拓良)
・仕様:総革装
・製本形態:プラ ラポルテ
・綴じ:支持体に糸綴じ
・表紙:背は茶オアシス革、平は濃紺山羊革
・デコール:中身の版画をイメージするデザイン
      染めた和紙と革のドット模様のインレイ・モザイクおよびカラー箔押し
・見返し:ヴェネツィア製マーブル紙
・はなぎれ:コワフ
・箔押し:近藤理恵による表紙裏にメッセージの箔押し
・サイズ:h195×w193×d15mm
・夫婦函:背革、外布、内スウェード貼り h218×w310×d30mm
・制作年:2013年

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『わが密室を彩る画家たち』

『わが密室を彩る画家たち』

『わが密室を彩る画家たち』

山本芳樹さんを神戸の自宅にお訪ねしたのは2003年頃だったでしょうか、今となっては定かではありません。神戸元町の海文堂で著名人の色紙の中に山本さんの色紙を見つけ、会いたい気持ちが湧いてきました。事前に訪問日時をお知らせしていましたので、お訪ねした時にはもちろん在宅されていましたが、「病院から抜け出してきました」と平然と話されたのには驚きました。当時入院中だったのです。書斎の二面にはびっしりと本で埋まった大きな本立てがあり、テーブルの上にも本が山のように積まれていました。イリナ イオネスコの撮影と思われる、山本さんとほぼ同じ大きさの写真が立てかけられているのが目を引きました。山本さんの厖大なバイロスのコレクションを拝見するのが目的の一つでしたが、少し前に兵庫県立美術館に全て寄贈されたということで、残念ながら残っていませんでした。しかし書斎で長時間お話ししてしまいました。後日、お願いしていた筆書きの識語と署名紙が届きました。

本書にバイロスの記述があることからバイロスの蔵書票を入手し、該当ページと山本さんの写真付き略歴ページに綴じ込んでもらいました。この他、識語と署名紙の前には坂東壯一さんの蔵書票も綴じ込んでもらっています。緑のカーフ革の平に本の内容にマッチした長い髪の女性が黒の山羊革で装幀された本書を見たら、山本さんはきっと喜んでくれたことと思います。

ところで不思議なことに、本書の奥付には白い紙が貼られていて、具体的な出版内容を知ることが出来ないようになっています。しかしインターネットで検索し、奥付内容を知ることが出来ました。

原本書誌
・著者:山本芳樹
・装幀 & レイアウト:畑本久幸
・写真撮影:名和秀樹
・発行所:中外書房
・サイズ:h210×w210mm
・出版年:1979年

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『季刊 R*』 第1号~第8号

『季刊 R*』 第1号~第8号

『季刊 R*』 第1号~第8号

『R*』は鹿鳴荘から出版された全ページ和紙に活版刷りした文集で、各号設定されたテーマに沿って多くの作家や詩人が寄稿し、版画家はオリジナル版画を提供している100部限定の冊子です。第1号から第8号までのテーマは、それぞれ「身体」「薔薇」「椅子」「天体」「顔」「草」「山」「海」です。私の場合第2号からの定期購読だったため、第1号だけがエディション番号が異なっています。私は若いころ山登りをやっていたこともあり、8点の版画の中では畦地梅太郎さんや大谷一良さんの木版画が気に入っています。それとこの8冊を入れる函が版元から出ることになっていましたが、なかなか出ないのでしびれを切らして近藤理恵さんに合本してもらいました。濃い緑の革と同系色のクロスが交差する表紙と綴じ糸が外から見える造りを大変面白いと思いました。近藤さんは「将来別の形で製本できるように、本体を出来るだけ原状に近い形で製本しました」と、今後のことまで考慮した本造りに感動しました。

この文集は天がアンカットとなっているため、実は全く文章を読んでいないのです。

原本書誌
・著者と版画作家、( )は各号のテーマ、「 」は版画のタイトル:
R*1(身体);中村雄二郎、渋沢孝輔、田中清光、串田孫一、堀井英男「白のコスチューム」
R*2(薔薇);堀多恵子、伊藤海彦、田中清光、串田孫一、丹阿弥丹波子「つぼみ」
R*3(椅子);茨木のり子、田中清光、鈴木獏、串田孫一、宮下登喜雄「イスとイヌ」
R*4(天体);岸田衿子、田中清光、串田孫一、大谷一良「蒼球」
R*5(顔);中村眞一郎、飯島耕一、田中清光、串田孫一、小林ドンゲ「顔」
R*6(草);石垣りん、竹西寛子、支倉隆子、田中清光、串田孫一、渡辺達正「草」
R*7(山);鳥見迅彦、小海永二、田中清光、串田孫一、畦地梅太郎「山男」
R*8(海);吉野弘、矢内原伊作、田中清光、串田孫一、城所祥「H港」
・編集&発行者:沖一夫
・発行所:鹿鳴荘
・印刷:精興社
・サイズ:h260×w180mm
・発行部数:100部
・出版年:1983~1987年

ルリユ―ル : 近藤理恵
・仕様:半革装
・製本形態:交差式ルリュール、足付き
・綴じ:黄色の綴じ糸による交差式綴じ
・表紙:緑カーフ革、緑紬織クロス。
・デコール:交差した表紙で円カーブを描く。合本なので、中身に糊付けや耳出しをしない足付きの交差式にした。
・見返し:ノド革、装飾和紙
・はなぎれ:綴じ糸
・箔押し:近藤理恵
・サイズ:h263×w188×d33mm
・夫婦函:外布、内スウェード貼り h283×w204×d47mm
・制作年:2006年

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