執筆者 lpadmin | 3月 26, 2021
本書は日夏レイさんの初めての詩集で、フランス文学者の生田耕作さんが「序」を、アルフォンス イノウエさんが描き下ろしの「装画」を、3名の写真家が彼女の「ポートレイト」を担当するという極めて贅沢な一冊です。それにしても印刷が決して良いとは言えないのが大変残念です。レイミア プレスで美しい詩集として出版したかった内容ですが、今となっては仕方がありません。出版の経緯は、ルリユ―ルに再録している『BURST』(2004年12月号)のインタビュー記事で知ることが出来ます。この本をルリユ―ルするに当たり、アルフォンスさんのアトリエを訪ね、本書と綴じ込む蔵書票等を持参しお話をしている内に、口絵を描いていただけることとなりました。後日届いた水彩画は本書にまさしく相応しいものでした。その他、私が選んだものよりこの本に相応しいからということで、何点かの蔵書票と版画が追加して同封されていました。アルフォンスさんはとても優しい人です。
これらの綴じ込む14点の作品を藤井敬子さんに預けて、完成を今か今かと待っているときの愉しさというものは、経験した者でないと分からないのではないでしょうか。
仔牛革とオリジナルペーストペーパーによるスリップケースとシュミーズに入っている新たに装われた本書は、白の仔牛革をベースにしてその上に水色と灰色の山羊革が螺旋形のモザイクにデザインされた明るくて瀟洒な雰意気を出しています。見返しは水色と灰色のグラデーションが楮和紙に手彩色され、この見返しを開いて本文ページを開くワクワク感を、いやがうえにも湧き立たせてくれています。綴じ込まれている数点の蔵書票の票主は、日夏さんはもとより、署名していただいている生田耕作さん、山本六三さんに私です。日夏さんは現在フランスにお住いですが、アルフォンスさんとは旧知の仲なので、いつか帰国された折に紹介していただき、本書に署名をいただくのが私の夢でもあります。
原本書誌
・著者:日夏レイ
・発行者:菅原貴緒
・発行所:株式会社牧神社
・印刷 製本:栄泰印刷
・サイズ:h210×w146mm
・出版年:1977年1月31日
ルリユール : 藤井敬子
・綴じ込み作品:アルフォンス イノウエによる水彩画1葉、蔵書票12葉、銅版画1葉 『BURST』掲載記事
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン(綴じつけ製本)
・綴じ:5本の麻紐支持体 麻糸綴じ
・表紙:山羊革と仔牛革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:楮和紙に手彩色
・はなぎれ:絹糸3色編み
・箔押し:大家利夫(本金)
・サイズ:h216×w157×d29mm
・シュミーズ:仔牛革とオリジナルペーストペーパー h217×w165mm
・スリップケース:仔牛革とオリジナルペーストペーパー h224×w165×d38mm
・制作年:2012年
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スリップケースに入っている本体
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本体、シュミーズ、スリップケース
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本体、シュミーズ、スリップケース
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シュミーズ
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表紙を拡げると
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見返し
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江副の蔵書票
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アルフォンスさんによる手彩色口絵
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日夏レイさんの蔵書票
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本体扉
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目次ページ
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日夏さんの口絵写真と蔵書票
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本文中の写真
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『BURST』中の挿画
執筆者 lpadmin | 3月 26, 2021
奢灞都館から直接本を購入するようになったのは、1990年代中ごろからのことです。特にオリジナル版画が入っている山本六三さんの『エロス タナトス』、金子國義さんの『初稿 眼球譚』、そしてアルフォンス イノウエさんの本書は私にとって貴重な限定本となっています。本書の出版案内が届いた時に限定本と共にその未綴じ本を二セット予約注文しました。すると生田かをるさんから了解の連絡とともに、「奥付のナンバーのところに朱で二冊とも『著者本』と入れたいのですが、(中略)製本が出来上がってから井上さんに書いて頂くか、私の方に言って頂くかして下さい。必ず空欄のままにしないて下さい。お願い申し上げます。生田」とお便りがありました。未綴じ本の二セットは、アルフォンスさん用と江副用に準備したものです。
折角の機会ですからこの本を出来るだけ豪華にしようと考え、神戸にアルフォンスさんを訪ね、このルリユ―ルのための水彩画のほかに蔵書票を含む銅版画を特別に刷っていただくことにしました。待つことしばし、アルフォンスさん用に8点、江副用に11点の作品が送られてきました。
私はこの未綴じ本のルリユ―ルを Atelier Leaves の藤井敬子さんにお願いし、待つこと1年半。初めての藤井さんのルリユ―ルを手にし、高まる期待に胸がドキドキして仕方がありませんでした。スリップケースから本書を取りだすと、薄いピンク革に濃いピンクに染めた楮和紙を削ぎ合わせた和紙モザイク法で制作されているシュミーズが現れます。そのシュミーズを開けると薄いクリーム色に染められた仔牛革に四色の仔牛革でモザイクされた表紙が現れました。いかにもアルフォンスさんの銅版画の雰囲気を醸し出しているデザインとなっています。アルフォンスさんの分と私の分の二冊をお願いしたところ、藤井さんはこの二冊を並べると表紙がつながるようにデザインしてくれました、まるで兄弟のように。この二冊の本には製本仕様のほかに内容などが細かく記載されているパスポートが付いているのです。私の期待以上の装幀に大いに満足し、早くアルフォンスさんに見せて自慢したい気持ちになりました。
完成後神保町のかわほり堂で生田さんにお会いしこの二冊本をお見せしたところ、その出来栄えに満足されたようで、約束どおり奥付に朱で「著者本」と書き入れて下さいました。後日、出来上がった一冊を持って神戸にアルフォンスさんをお訪ねし、贈り物として差し上げたところ、大変喜んで下さいました。私もとても嬉しかったです。
原本書誌
・著者:アルフォンス イノウエ
・付属作品:アルフォンス イノウエによるオリジナル銅版画2葉
・発行者:生田かをる
・発行所:奢灞都館
・印刷:創文社
・製本:須川バインダリー
・小口装飾:天金
・サイズ:h262×w215×d18mm
・スリップケース:h269×w197×d28mm
・発行部数:120部
・出版年:平成15(2003)年7月
ルリユール : 藤井敬子
・綴じ込み作品:アルフォンス イノウエによる水彩画1葉、銅版画12葉
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン(綴じつけ製本)
・綴じ:5本の麻紐支持体 麻糸綴じ 足つき
・表紙:4色の仔牛革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:手染め楮和紙モザイク
・はなぎれ:絹糸3色による手編み
・タイトル箔押し:大家利夫(本金)
・小口装飾:藤井敬子(天金)
・サイズ:h268×w207×d30mm
・シュミーズ:仔牛革と楮和紙手彩モザイク
・スリップケース:仔牛革と楮和紙 h276×w217×d37mm
・制作年:2007年
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本体、シュミーズ、スリップケース
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本体、シュミーズ、スリップケース
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シュミーズ、スリップケース
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表紙を拡げると
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シュミーズ
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見返し
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本体とパスポート
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手彩色口絵
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手彩色オリジナル銅版画
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本文中に綴じ込んだ銅版画
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本文ページ
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本文ページ
執筆者 lpadmin | 3月 26, 2021
「子猫のゴヤは生まれたときから影がなかった。」で始まる挿絵本『影法師』は、柄澤齊さんによる物語です。もちろん口絵、挿絵ともに柄澤さんによる木口木版画です。最初から製本することを前提として発行されていますので、150部すべて未綴じ本です。
柄澤さんの挿絵本はこれまで、『ペレアスとメリザンド』『雅歌』『聖者の行進』などがあります。「SHIP」と共に届いた出版案内を見て早速予約注文しました。
原井栄子さんがイタリアで製本の修業をしていることを知った私は、この本も彼女にルリユールしてもらうこととし、別の1冊とともにイタリアに郵送しました。
「影法師」と背に空押しされている夫婦函を開けると、黒い山羊革の表紙の中から、いきなり濃い青色のしっぽが飛び出してきました。本文を開くと挿絵から分かるのですが、それは正に草むらに隠れているゴヤのしっぽそのものです。このしっぽの濃い青色の山羊革は表紙内側の見返しにも使用されていて、表紙を開くと私の視線はそのしっぽから見返しへとスムーズに動いていきます。よく見ると、天も同じ濃い青色に染められていて憎いばかりの心配りです。日本から遠く離れたイタリアの地で、原井さんはどのような気持ちでこの本を製本していたのか、私には知る由もありませんが、「EIKO HARAI」と空押しされた本書をいつまでも大切にしたいと思っていました。しかしその後、この可愛い本を所蔵するにふさわしい長男のお嫁さんにプレゼントして、大切にしてもらうことにしたのでした。
原本書誌
・著者:柄澤齊
・発行者:柄澤齊
・装幀 & レイアウト:柄澤齊
・発行所:梓丁室
・印刷:インクジェットプリント
・外装:二つ折り簡易たとう
・サイズ:h148×w119×d6mm
・発行部数:150部
・出版年:2005年6月6日
ルリユ―ル : 原井栄子
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり綴じ
・表紙:山羊革オンレイ
・表紙内側見返し:山羊革
・見返し:スウェード
・天装飾:天染め
・はなぎれ:三段編み
・サイズ:h153×w125×d15mm
・夫婦函:h178×w150×d35mm
・制作年:2011年
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夫婦函
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夫婦函
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夫婦函を開けると…
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表紙を開けると…
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表表紙と裏表紙
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前と後の見返し
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柄澤さんによる口絵
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本文ページ
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本文ページ
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奥付
執筆者 lpadmin | 3月 26, 2021
車谷長吉さんの作品を読むようになったのは、最初の作品集『鹽壺の匙』にひどく感激したからです。そのあとがきに書かれている「詩や小説を書くことは救済の装置であると同時に、一つの悪である。(中略)凡て生前の遺稿として書いた。書くことは狂気である」という言葉に大いに刺激を受けてしまいました。それからは彼の作品を読むようになったのです。
湯川書房から、車谷さんの『抜髪』『車谷長吉句集』『蜘蛛の巣』『車谷長吉恋文絵』の4冊が出版されていて、私はいずれも高槻市にある書肆R.R.から購入しています。いつ頃だったでしょうか、書肆R.R.から送られてきた古書目録を見て、すぐさま未綴じ、署名箋付きの『車谷長吉句集』を注文しました。この未綴じ本は湯川書房と昔から縁の深かった書肆R.R.店主が入手され、目録掲載となったと思われます。
製本家の原井栄子さんと知り合ったのは、2008年福岡で開催されていた豆本の展覧会だったと記憶しています。その後原井さんはイタリアに渡り、リミニ在住の製本家ルイジ カスティリオーニさん(Luigi Castiglioni)のアトリエで製本の修業をしました。修行中の2011年4月に私は彼女にルリユールして欲しい本を2冊送りました。その内の1冊が本書です。そして夫婦函に入ったルリユール本が届いたのは、その年の暮れのことでした。
しっかりした夫婦函を開けると、濃淡の赤染め山羊革でモザイクによる正方形が黒染め山羊革表紙の中央にオンレイされています。この赤は車谷さんの「狂気」を思い起こさせる色だと思います。表紙側の見返しには山羊革が、本文側にはスウェードが使用されていて、重厚な三段装となっています。中表紙前には2005年神保町で開催された「車谷長吉俳句墨書展」会場で私が撮影した写真が綴じ込まれているほか、車谷さんの著書のために作ってもらった林美紀子さんの木版蔵書票が貼られています。
私は車谷さんの次の二句が大好きです。
秋の蠅忘れたきこと思ひ出す
鴫焼きの茄子の尻喰うをなごかな
原本書誌
・著者:車谷長吉
・発行者:湯川誠一
・装幀:加川邦章
・発行所:湯川書房
・印刷:創文社
・製本:神戸須川バインダリー
・体裁:本分二色刷
・表紙:紬着地とモロッコ革による継表紙
・サイズ:h197×w155×d15mm
・スリップケース:h202×w158×d23mm
・発行部数:100部
・出版年:2000年5月30日
ルリユ―ル : 原井栄子
・綴じ込み作品:口絵に車谷長吉の写真(2005年の俳句墨書展会場にて)
・仕様: 総革装
・製本形態: パッセ カルトン
・綴じ:本かがり綴じ
・表紙: 山羊革、山羊赤染革オンレイ
・表紙内側見返し: 山羊革
・見返し:スウェード
・天装飾:天石墨染め
・はなぎれ:三段編み
・サイズ:h193×w155×d18mm
・夫婦函:h220×w180×d42mm
・制作年:2011年
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夫婦函
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夫婦函
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夫婦函を開けると…
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本体と夫婦函
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本体と夫婦函
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表紙全体
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前と後の見返し
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林美紀子さんの蔵書票
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車谷さんの写真
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本文ページ
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奥付
執筆者 lpadmin | 3月 26, 2021
アルフォンス イノウエさんの詩画集『夢の半周』は、レイミア プレスからオリジナル版を2008年に、印刷版をワイアートギャラリーとの共同で2010年に出版しました。元々レイミア プレスはこの詩画集を出版するために2007年2月に設立したものです。オリジナル版の企画は2006年ですから出版までに約3年掛かったことになります。フランスとイギリスの詩人による13篇の詩に、アルフォンスさんがイメージを喚起されて制作した17点のオリジナル銅版画と表紙・目次・奥附の小版画3点を加えた計20点を、原詩と和訳を印刷したトレーシングペーパーと共に未綴じで特別収納函に納めて出版しました。発行部数が25部と僅かだったために、たちまち満席となりました。再発行を希望する人が続出したため、ワイアートギャラリーと共同でオリジナル版画を1点入れて印刷版として60部出版することとしました。本書の印刷は岡山の中野コロタイプに依頼しましたが、アルフォンスさんがその印刷の出来栄えを大いに気に入り、その後『作品集』も同所で印刷することとなります。
印刷版の未綴じ本をルリユ―ルするに当たり、アルフォンスさんの銅版画を3点追加して綴じ込んでもらいました。依頼してから待つこと5年。待ちに待った「出来ましたよ~!」という連絡で、早速羽田野麻吏さんのアトリエを訪ねました。
例のごとく保護函を開けると、黒布で覆われた夫婦函には英文タイトル「MY DREAM HAS COME TO A HALF WAY」が金箔押しされ、その下には金線箔押しの曲線が描かれています。夫婦函を開いて分かったのですが、この曲線は表紙のデザインを思い起こさせるように配慮されているようです。表紙は全体を仔牛革の薄いクリーム色のパーチメントで包まれ、そこにイカロスあるいはスフィンクスの翼と思われる形状の染め紙が貼り込まれています。背を中心に表と裏の表紙を広げると、この本が翼を広げていまにも飛び上がりそうな錯覚を覚えるのは私だけでしょうか。表紙をめくると薄水色の豚革に再び蜥蜴革の翼が現れて飛翔をうながしているようです。いつものことですが、羽田野さんには私の想像をはるかに超えた装幀デザインで驚かされてしまいますが、私にはそれを期待している面も大いにあるように思います。
原本書誌
・著者:アルフォンス イノウエ
・付属作品:新作オリジナル銅版画「クリスタベル12」を巻末に綴じ込み
・装幀:角背上製本、アルフォンス イノウエのデザインによるハードカバー
・サイズ:h275×w240×d12mm
・スリップケース: h281×w242×d18mm
・発行:レイミア プレス & ワイアートギャラリー
・レイアウト:平野奈巳
・発行部数:60部
・出版年:2010年11月20日
ルリユール:羽田野麻吏
・綴込み作品:アルフォンス イノウエによる銅版画2葉、蔵書票1葉
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり(麻紐支持体5本)
・表紙:パーチメントに仔牛革と染め紙・蜥蜴革・パラジウム箔押しのデコール
・表紙内側見返し:豚革に蜥蜴革とパラジウム箔押しのデコール
・見返し:染め紙
・はなぎれ:5色絹糸三段編み
・箔押し:中村美奈子
・サイズ:h271×w238×d17mm
・夫婦函:h285×w250×d25mm
・制作年:2018年
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夫婦函を開けると・・・
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本体と夫婦函
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全体表紙
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見返し
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前と後の見返し
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印刷版表紙
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アルフォンスさんの蔵書票
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扉
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本文ページ
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本文ページ
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綴じ込み銅版画
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綴じ込み銅版画
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綴じ込み銅版画