『影法師』

「子猫のゴヤは生まれたときから影がなかった。」で始まる挿絵本『影法師』は、柄澤齊さんによる物語です。もちろん口絵、挿絵ともに柄澤さんによる木口木版画です。最初から製本することを前提として発行されていますので、150部すべて未綴じ本です。

柄澤さんの挿絵本はこれまで、『ペレアスとメリザンド』『雅歌』『聖者の行進』などがあります。「SHIP」と共に届いた出版案内を見て早速予約注文しました。

原井栄子さんがイタリアで製本の修業をしていることを知った私は、この本も彼女にルリユールしてもらうこととし、別の1冊とともにイタリアに郵送しました。

「影法師」と背に空押しされている夫婦函を開けると、黒い山羊革の表紙の中から、いきなり濃い青色のしっぽが飛び出してきました。本文を開くと挿絵から分かるのですが、それは正に草むらに隠れているゴヤのしっぽそのものです。このしっぽの濃い青色の山羊革は表紙内側の見返しにも使用されていて、表紙を開くと私の視線はそのしっぽから見返しへとスムーズに動いていきます。よく見ると、天も同じ濃い青色に染められていて憎いばかりの心配りです。日本から遠く離れたイタリアの地で、原井さんはどのような気持ちでこの本を製本していたのか、私には知る由もありませんが、「EIKO HARAI」と空押しされた本書をいつまでも大切にしたいと思っていました。しかしその後、この可愛い本を所蔵するにふさわしい長男のお嫁さんにプレゼントして、大切にしてもらうことにしたのでした。

原本書誌
・著者:柄澤齊
・発行者:柄澤齊
・装幀 & レイアウト:柄澤齊
・発行所:梓丁室
・印刷:インクジェットプリント
・外装:二つ折り簡易たとう
・サイズ:h148×w119×d6mm
・発行部数:150部
・出版年:2005年6月6日

ルリユ―ル : 原井栄子
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり綴じ
・表紙:山羊革オンレイ
・表紙内側見返し:山羊革
・見返し:スウェード
・天装飾:天染め
・はなぎれ:三段編み
・サイズ:h153×w125×d15mm
・夫婦函:h178×w150×d35mm
・制作年:2011年

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