『シメール』

本書は日夏レイさんの初めての詩集で、フランス文学者の生田耕作さんが「序」を、アルフォンス イノウエさんが描き下ろしの「装画」を、3名の写真家が彼女の「ポートレイト」を担当するという極めて贅沢な一冊です。それにしても印刷が決して良いとは言えないのが大変残念です。レイミア プレスで美しい詩集として出版したかった内容ですが、今となっては仕方がありません。出版の経緯は、ルリユ―ルに再録している『BURST』(2004年12月号)のインタビュー記事で知ることが出来ます。この本をルリユ―ルするに当たり、アルフォンスさんのアトリエを訪ね、本書と綴じ込む蔵書票等を持参しお話をしている内に、口絵を描いていただけることとなりました。後日届いた水彩画は本書にまさしく相応しいものでした。その他、私が選んだものよりこの本に相応しいからということで、何点かの蔵書票と版画が追加して同封されていました。アルフォンスさんはとても優しい人です。

これらの綴じ込む14点の作品を藤井敬子さんに預けて、完成を今か今かと待っているときの愉しさというものは、経験した者でないと分からないのではないでしょうか。

仔牛革とオリジナルペーストペーパーによるスリップケースとシュミーズに入っている新たに装われた本書は、白の仔牛革をベースにしてその上に水色と灰色の山羊革が螺旋形のモザイクにデザインされた明るくて瀟洒な雰意気を出しています。見返しは水色と灰色のグラデーションが楮和紙に手彩色され、この見返しを開いて本文ページを開くワクワク感を、いやがうえにも湧き立たせてくれています。綴じ込まれている数点の蔵書票の票主は、日夏さんはもとより、署名していただいている生田耕作さん、山本六三さんに私です。日夏さんは現在フランスにお住いですが、アルフォンスさんとは旧知の仲なので、いつか帰国された折に紹介していただき、本書に署名をいただくのが私の夢でもあります。

原本書誌
・著者:日夏レイ
・発行者:菅原貴緒
・発行所:株式会社牧神社
・印刷 製本:栄泰印刷
・サイズ:h210×w146mm
・出版年:1977年1月31日

ルリユール : 藤井敬子
・綴じ込み作品:アルフォンス イノウエによる水彩画1葉、蔵書票12葉、銅版画1葉 『BURST』掲載記事
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン(綴じつけ製本)
・綴じ:5本の麻紐支持体 麻糸綴じ
・表紙:山羊革と仔牛革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:楮和紙に手彩色
・はなぎれ:絹糸3色編み
・箔押し:大家利夫(本金)
・サイズ:h216×w157×d29mm
・シュミーズ:仔牛革とオリジナルペーストペーパー h217×w165mm
・スリップケース:仔牛革とオリジナルペーストペーパー h224×w165×d38mm
・制作年:2012年

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