12.『Alphonse Inoue Works: Esquisses & Etchings 1976 – 2021』

12.『Alphonse Inoue Works: Esquisses & Etchings 1976 – 2021』

12.『Alphonse Inoue Works: Esquisses & Etchings 1976 – 2021』

- アルフォンス イノウエ エスキース集 -

私は年に2、3回神戸にアルフォンス イノウエさんを訪ねるのを愉しみにしています。お会いしてお話をしたり食事をしたりして半日を過ごすのですが、いつも刺激を受けて帰路に就くのです。アルフォンスさんは自分が疑問に思っていることなどインターネットで検索し、新しい知識を入手されているばかりではなく、新しく買った本を次々と読んでおられます。それに反して私はいつもノホホンとした日常生活を送っているので、アルフォンスさんが話される内容がとても新鮮で刺激を受ける、というわけです。
2020年初めから、新型コロナが世界を席巻し、わが国でも緊急事態宣言が発令され、自由な外出が制限されていました。そのような中で、少し流行が収まったかに見えた2021年7月に私は久しぶりに神戸に行き、アルフォンスさんのアトリエを訪ねました。
このようなステイホームの状況の中アルフォンスさんは、銅版画や蔵書票制作のために描いていたエスキース(下絵)を整理されていました。「作品が完成した後に残ったエスキースのうち、乱雑に描いたエスキースは破棄したものが多く、残っていて丁寧に描いたエスキースは作品総数の裡、僅か5、60点余りでした。エッチングにするつもりで着手しなかったエスキースもかなり残っていました」ということです。
アトリエでその整理されたエスキースを拝見し、その美しさに大変感動したのは言うまでもありません。それらは銅版画として完成する前の作家のイマジネーションがその画面から溢れていました。私はそれらのエスキースと完成した作品を並べて見ることにより、エスキースから作品に至る作家の制作過程を想像することができるのではないかと思いました。そこでこれらのエスキースと作品を併置した画集の出版を、即座にアルフォンスさんに提案したところ、快く承諾していただきました。
これまでレイミア プレスでは、アルフォンスさんの画集として『夢の半周』(オリジナル版と印刷版)、『蔵書票集』、『作品集』の4冊を出版してまいりましたが、この『エスキース集』により、アルフォンスさんの創造の世界をさらに深く理解することが出来ると、大いに期待したところです。
今回の画集は、普段私たちが見る機会がほとんどないエスキースを中心とした内容になっていますので、無理とは思いましたがアルフォンスさんに、エスキースと同じような水彩画をA版(特装版)に綴じ込みたいので制作をお願いしたいと申し出ました。当初はかなり厳しいというお話しでしたが、「出来上がるまで何年でも待ちます」とお話ししたところ、何とか了承していただきました。
この出版を計画してから1年半が経った2023年1月、アルフォンスさんのアトリエを再び訪ねました。私がお願いしていた水彩画が完成していて、一枚一枚それを拝見していましたが、それらの水彩画の素晴らしいことに、恥ずかしながらアルフォンスさんの目の前で、私はつい……。それほど作品の美しさと質の高さに感動・感激してしまい、胸にこみあげるものが沸き上がってきたのです。これほどまでにアルフォンスさんはこの『エスキース集』出版に想いをこめておられたのだと深く感じ入ってしまいました。
その一方ならぬ想いとは、校正の段階で強く感じました。校正紙は印刷所からまずアルフォンスさんに送られ、校正後に私あてに届くことになっています。校正紙を見ると、アルフォンスさんの指示が細かく記されています。図版ページはアルフォンスさんが、その他文章や作品リスト、年譜などは私が校正することにしていました。校正は、初校、二校、三校と繰り返され、次第に修正箇所は少なくなってきますが、アルフォンスさんの校正は修正箇所の指摘だけではなく、新しく描かれたカットが該当するページに貼ってあったりと、微に入り細に入った内容となっています。四校、五校と進み、とうとう最終稿は六校までとなりました。校正に大変時間がかかりましたが、お蔭でとても納得のいく美しい本が出来上がりました。
今回も3種類の出版を計画しました。すなわち、A版(特装版)、B版(普及版)そしてC版(未綴じ版)です。それぞれの仕様は次の通りです。
A版(特装版)は、私がいつもルリユールをお願いしている atelier CORYLUSの羽田野麻吏さんに、今回も無理を承知でお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。以前羽田野さんにお願いした印刷版の『夢の半周』ルリユール本をアルフォンスさんにお見せしたところ、そのパーチメント装が大いに気に入ったご様子だったので、今回も総パーチメント装にすることを羽田野さんは提案されました。羽田野さんデザインによる表紙がパーチメントの山羊革を透して見えるように、革を薄く削る作業に大いに難儀されたようでした。しかしそのおかげでアルフォンスさんの頭文字「A」をあしらった素敵なデザイン画を薄くなった革を透してほんのりと見ることが出来ます。見返しにつかっているマーブル紙は、羽田野さんが愛知県岡崎市にあるマーブル紙作家の杉浦綾さんの工房を訪ねて、今回の特装版に相応しいマーブルを特注で染めてもらったものです。パターンは同じですが色調はピーコック系とローズ系の二種類(エディション番号が奇数と偶数)があります。本書は大型本となるために一度に22部の製本は厳しく、2年にわたって2回に分けて製本することとなり、予約の皆さんには長期間お待ちいただくこととなりました。その結果、これまでにない素晴らしい一冊が出来上がり、レイミア プレスではこれ以上の本はもう出せないのではないかと思った次第です。
そしてB版(普及版)とC版(未綴じ版)は恩田則保さんにお願いしました。恩田さんにはこれまでも製本と函造りは何度もお願いしていますが、相変わらず丁寧で堅牢な本造りとエッジのきいた函造りには頭が下がります。このような作業を当たり前のようにやっていく恩田さんは、やはり典型的な職人です。いつも感謝しています。

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A版

B版

C版

A版仕様

  • 本文紙寸法:267×257×11mm
  • 製本仕様
    構造:足つき角背製本
    表紙:総パーチメント二重装(製本家によるデザイン表紙)
    使用する革:パーチメント(山羊)、水蛇
    金線箔押し:線と花型モチーフの構成
    文字箔押し:表紙に著者名と書名、オモテ表紙チリに製本家名、ウラ表紙チリに出版年
    見返し:シープスウェード(色調はピーコック系とローズ系)と特注染めマーブル紙
    函の形態:夫婦函
    保護箱:白段ボールにラベル付き
  • 綴込み作品:銅版画5点と鉛筆・ペン水彩画(画寸平均229×194mm)1点
  • 製本:atelier CORYLUS 羽田野麻吏
  • 箔押し:中村美奈子
  • マーブル紙:Bottega di Aya製 特注手染めマーブル紙
  • 翻訳:阪本政仁
  • 印刷:㈱中野コロタイプ
  • 発行部数:20部(他にEA2部)
  • 発行日:2024年1月29日
  • ISBN:978-4-909796-05-9 C0071
  • 頒布価格:440,000円(税込)

在庫状況

満席となりました

B版仕様

  • 本文紙寸法:267×257mm
  • 製本仕様:糸かがり綴じ 角背及び丸背紙装幀 函入り
  • 製本・製函:恩田則保
  • 翻訳・印刷:A版に同じ
  • 発行部数:丸背20部、角背140部
  • 発行日:2023年1月29日
  • ISBN:978-4-909796-06-6 C0071
  • 頒布価格:丸背45,100円(税込)、角背39,600円(税込)

在庫状況

発売中

C版仕様

  • 本文紙寸法:308×278mm
  • 製本仕様:未綴じ函入り
  • 製函:恩田則保
  • 翻訳・印刷:A版に同じ
  • 発行部数:20部
  • 発行日:2023年1月29日
  • ISBN:978-4-909796-07-3 C0071
  • 頒布価格:33,000円(税込)

在庫状況

発売中(残部僅少)

Ⅵ-20 『LE PETIT PARISIEN』

Ⅵ-20 『LE PETIT PARISIEN』

Ⅵ-20 『LE PETIT PARISIEN』

石川順一さんは愛書家で読書家です。普通愛書家は自分の好きな作家の書籍や貴重な書籍を蒐集しますが、集めた書籍を読むようなことはしません。従って石川さんは大変稀有な方です。彼は墨田区東向島で書斎を運営しています。この書斎の本棚に並ぶ書籍は古今東西多種多様の分野のもので、中には大変貴重なものもありますが、彼にお願いすると手に取ってみることが出来ます。この書斎では誰でも挽き立てのコーヒーをあるいはビールなどを飲みながら書物を繙くことができる気持ちの良い空間です。彼は書籍ばかりではなく、蔵書票にも造詣が深く、その話しぶりに魅せられて話の中にのめり込んでゆくことが多々あります。
その彼が2022年に一冊の書籍を自費出版しました。『LE PETIT PARISIEN』という彼の書斎名をタイトルとしたものです。表紙、紙、フォント等々にこだわり尽くした一冊となっています。彼の本書に対する思い入れとこだわりは、本書の企画・制作を担当した川鍋昭彦さんによる巻末解説に詳述されています。
そして簡易製本された本書を各人が好きにルリユールし、これらを書斎に持ち寄って展覧会をしようということとなりました。私は製本が出来ませんので製本家の藤井敬子さんにルリユールをお願いして出品しました。
展覧会は2023年12月3日から書斎で開かれました。高橋千裕さん、宮島亜紀さん、赤井都さん、細野智光さん、辻村和美さん、恩田則保さん等々十数名の手になるそれぞれの『LE PETIT PARISIEN』が並べられ大変見応えのある展覧会でした。
余談ですが、石川さんのこの書斎は作家の深沢七郎さんがかつて今川焼屋「夢屋」を開いていた同じ場所です。「夢屋」の包装紙はあの横尾忠則さんがデザインしたことでも有名ですが、ネットオークション等でこの包装紙をたまに見かけることがあります。

Ⅵ-16
原本書誌
・タイトル:LE PETIT PARISIEN
・著者:石川順一
・発行:LE PETIT PARISIEN
・企画:パンオフィス 川鍋昭彦
・印刷・製本:東海印刷/恩田製本所 恩田則保
・組版・製版:宮島亜紀/協進社
・サイズ:約h200×w137mm
・発行部数:500部
・出版年:2022年2月13日

ルリユール
・製本形態:プラ・ラボルテ製本
・デコール:仔牛革、山羊革
・見返し:マーブル紙(IL PAPIRO)
・タイトル:箔押し(藤井敬子)
・花ぎれ:手編み花ぎれ
・サイズ:h205×w148×d35mm
・ソフトジャケット:レザック紙、人工スウェード
・スリップケース:手彩色マーブル紙、山羊革
・スリップケース大きさ:h211×w153×d38mm
・制作年:2023年

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Ⅵ-16~19 渡邉幹夫さんの4冊

Ⅵ-16~19 渡邉幹夫さんの4冊

Ⅵ-16~19 渡邉幹夫さんの4冊

私の部屋の本棚には、敬愛する作家のファイルが立て掛けてあります。例えば、アルフォンス イノウエさん、坂東壯一さん、林由紀子さんはもとより、柄澤齊さん、蒲地清爾さん、杉本一文さん、戸村茂樹さんなどです。それらの中に渡邉幹夫さんの厚いファイルも含まれています。
渡邉さんと初めて会った1988年から現在に至るまでのもろもろの資料がそこに入っています。例えば国内で開かれた展覧会のDM、展覧会会場やパリなどで撮影した写真、届いた季節の挨拶状などです。このファイルをめくってゆくと、これまでの30年を超える渡邉さんとの時間を思い出すことができます。
私が渡邉さんと初めて会ったのは1988年5月のことでした。何気なく入った京橋の画廊で彼の個展が開かれていました。裸婦をテーマとしたメゾティントの作品が展示されていて、作家を囲んで数人の客が歓談していました。その人が作家だとわかったのは、ひげを生やしたその風貌からです。話をしていた人たちは、彼の昔の友人たちでした。
メゾティント作品が好きな私は、展示されている作品をじっくり見て回りました。版画という二次元の世界からまるで三次元のような裸婦の身体が漆黒の背景から飛び出してくるような錯覚をお覚えました。そうです、彫刻のトルソーのような感じです。自分の気持ちがざわついてくるのを抑えることができませんでした。メゾティント作品を見てこのような気持ちになることは今までほとんどありませんでした。気持ちが収まるのを待って渡邉さんと少し話をしました。横浜生まれでフランスで作家活動をしていることを知りました。翌年フランスから年賀状が届きました。そして日本で開催される展覧会の案内状もその後届くようになりました。機会があれば必ず会場に足を運び、財布が許せば作品を購入するようになりました。加えて帰国の報が入ったら一緒に食事をすることも度々ありました。
2011年9月カミサンとフランスに行った折にはパリで共に会食し、ブルターニュ地方のPIERRICの自宅訪問を誘われ、行くことにしました。お訪ねしたらその地方の広い丘の上の古い遺跡や鬱蒼と茂る森の中の池の周りを一緒に散策しました。自宅前の道路の向こうに沢山のヤドリギを付けた樹木が見られ、とても印象的でした。アトリエ兼自宅は広い敷地にあり、2匹の大きな犬と小さなヒツジ数頭が庭を走り回っていました。ヒツジは草刈りをしなくてよいように飼っているとの事でした。その夜は奥様の手料理をごちそうになり、渡邉さんの知り合いの農家の宿に泊まり、翌日彼の運転でナントに行きました。ナントの印刷博物館で渡邉さんの作品集の出版打ち合わせがあったので同行したのです。そこは活版を中心とした印刷をやっており、古い印刷機器や製本道具などが所狭しと置かれていました。渡邉さんの打ち合わせの間、私たちは館内の資料を見学し、石版印刷のデモンストレーションをやったりしました。その後皆でナント城を見学し、広場で昼食を摂りながら歓談後、私たちは列車でパリに向かいました。
フランスから届く季節の便りには、メゾティントの作品が添えられています。そのテーマはチョウ、ハチ、トンボ、カゲロウ、アリ、カエル、トカゲなど小さな虫や小動物たちで、きっと渡邉さんの自宅周辺に生息しているだろう自然の生き物たちです。このような小動物を描くようになったのは2000年ころからで、その後小動物や魚、野菜などを対象とした作品が多くなっています。2015年には渡邉さんが描いた昆虫学者ジャン アンリ ファーブルの肖像画と昆虫類が、ファーブル没後100年を記念したフランス郵政公社発行の記念切手の図案に採用されています。
渡邉さんはこれまで画集をたくさん上梓されていますが、その中には友人の詩人や俳人とコラボレーションしたものがあります。私はそれらを数点所蔵していますが、いつかはルリユールして渡邉さんに見てもらいたいと思っていました。なぜならフランスはルリユールを教える機関がたくさんあり、その先駆的役割を果たしている国です。従って渡邉さんもたくさんの美しいルリユールをきっと目にしているはずですので、我が国にも素晴らしいルリユール製本家がいることを知って欲しいと思っているからです。
今回そのようなわけで藤井敬子さんに4冊の画集を預け、ルリユールしてもらうことにしたわけです。その内の3冊(内1冊はシェルケース)が完成し手元にありましたので、2022年3月に帰国されていた渡邉さんと新橋で会い、早速見てもらいました。渡邉さんは手にとって表紙をなでるようにしながらじっくり鑑賞しています。物も言わないでゆっくり時間を掛けてページをめくります。1冊見終わったら次の本を手に取り、また同じように時間を掛けて見ています。3冊目は俳句とメゾティントのコラボレーションの折本仕立てで、裸本だったためにシェルケースを作ってもらったものです。これには渡邉さんと俳人の署名がなかったので、その場でしていただきましたが、俳人の署名は無いままです。全てを観終わった後に「う~ん、素晴らしいですね。自分の本がこのように美しく製本されているのを見るのはとても嬉しいし、大感激です。」と言っていただきました。私も大変嬉しかったことは言うに及びません。
渡邉さんはルリユ―ルはもちろんですが、蔵書票にも興味をお持ちですがこれまで1点だけ制作されています。その内私の蔵書票も制作しようとも言ってもらっていますが、今回制作途中の1点を頂戴しました。そこには紙を食べている2匹の紙魚と蜥蜴が配されたカラーメゾティントです。誰のための蔵書票か知りませんが、この票主には嫉妬を憶えてしまうほど素晴らしい出来です。渡邉さんはこれから友人の展覧会を見るために岡山に行き、帰路吉野山の桜を見てフランスに帰るとのことで、私たちは次の再会を約束して別れました。
藤井敬子さんの今回のルリユールするに当たっての考えは、以下のとおりです。
それぞれの本の詩や俳句についてはフランス語だったこともあり、Google訳で読んでみましたが、それぞれ印象に残った言葉と渡邉さんの絵からイメージして色や形を決めました。4点の渡邉幹夫さんの本は、水平線を共通テーマとしてデザインしています。
“Mon floriège ma dévorée”は直線だけで構成すること。
“Hidden from moon light”は曲線だけでデザイン、開くと一面の絵になるようにオープン背構造の仕立てにしました。
折本仕立ての俳句集の函は、版画とちょっと違うのですが、その表紙から水の流れをイメージして表紙の図案とペーストペーパーを作成しました。
 

Ⅵ-16.Mon floriège ma dévorée

原本書誌
・著者 版画:Mikio WATANABE / Emmanuel DAMON
・発行:AI Manar 2011/7
・edition:30/40
 
ルリユール
・製本:綴じつけ製本 5本の麻紐支持体、麻糸綴じ
・デコール:仔牛革、山羊革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:オリジナルペーストペーパー
・タイトル箔押し:本金箔押し (大家利夫)
・花ぎれ:絹糸4色、三段編み
・サイズ:H252×256.5×D18mm
シェルケース
・クロス、山羊革、人工スウェード
・サイズ:H266×268×D28mm
・制作年:2021年3月
 

Ⅵ-17.Hidden from moon light

原本書誌
・著者 版画:Mikio WATANABE
・俳句:Victor ORTIZ
・フランス語訳:Jackie MARTINE
・発行:The Musee de L’imprimerie de Nantes 2012
・edition:XXVII/XXX
 
ルリユール
・製本:オープン背構造ルリユール 仔牛革支持体、麻糸綴じ
・デコール:仔牛革、山羊革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:オリジナルペーストペーパー
・タイトル:箔押し (大家利夫)
・サイズ:H246×248×D24mm
シェルケース
・クロス、仔牛革、人工スウェード
・サイズ:H269×265×D36mm
・制作年:2021年6月
 

Ⅵ-18  Rippling Fragrance

原本書誌
・著者 版画:Mikio WATANABE
・俳句:Victor ORTIZ
・印刷:Musée de I’mprimarie du Nantes
・発行:2015年
・製本:Jeanne Frére
・edition:A.P.III/III
 
シェルケース
・仔牛革、オリジナルペーストペーパー
・H249×284×D35mm
・制作年:2021年10月
 

Ⅵ-19 LE REVERS DU MONDE

原本書誌
・版画・写真:Mikio WATANABE
・詩:Shiham Bouhlal
・発行:AL MANAR / Alain Gorius
・印刷:La S.A.I.G. a L’Hay-les-Roses  2013/11
・edition:25/30
 
ルリユール
・製本:綴じつけ製本 5本 麻支持体
・デコール:仔牛革、山羊革によるオンレイ、インレイモザイク
・見返し:オリジナルペーストペーパー
・タイトル:箔押し (大家利夫)
・サイズ:H292×220×D17mm
シェルケース
・クロス、仔牛革、人工スウェード
・サイズ:H316×248×D32mm
・制作年:2022年10月

Photo Ⅵ-16.Mon floriège ma dévorée

Photo Ⅵ-17.Hidden from moon light

Photo Ⅵ-18  Rippling Fragrance

Photo Ⅵ-19 LE REVERS DU MONDE

Ⅴ-5 『ポー奇譚集』

Ⅴ-5 『ポー奇譚集』

Ⅴ-5 『ポー奇譚集』

本書は、深江英賢さんが主宰する藍峯舎の第八弾出版物で、特装版(30部)と上製版(200部)があります。特装版には坂東壯一さんによるオリジナル銅版画7葉が綴じ込まれています。本書に関する詳細な内容は藍峯舎のホームページ(http://www.rampousha.co.jp)に掲載されています。
本書出版を記念して「坂東壯一展 – エドガー・ポー、江戸川亂步の世界 -」が、2018年12月10~16日に Gallery Oculus で開催され、綴じ込まれた描き下しの版画が展示されました。併せて、協賛特別企画として乱歩研究家の中 相作さんによる「ポー、乱歩、温、啓助を語る」が催され、多くの方々がそのお話しに魅了されました。
藍峯舎第五弾出版の江戸川亂步自選短編集『幻想と怪奇』と同じく、私は主宰者の深江さんにお願いして今回も未綴じ版をお譲りいただくとともに、坂東さんにはオリジナル銅版画7点をお頒けいただきました。
もちろんこのような行動は、本書をルリユールしてもらうためのもので、『幻想と怪奇』は藤井敬子さんにお願いしたのですが、今回は羽田野麻吏さんにお願いしました。はからずも日本を代表する二人の製本家・造本作家による藍峯舎出版物ルリユール本の競演を目の当たりにするという幸せな機会を得ることが出来ました。

原本書誌
・タイトル:ポー奇譚集
・訳者:渡邊 溫、渡邊啓助
・綴込み作品:坂東壯一によるオリジナル銅版画7葉
・発行者:深江英賢
・装幀:髙橋千裕
・装幀仕様:総黒色染羊革
・天装飾・表紙箔押し:天金・本金箔+赤箔
・発行所:株式会社藍峯舎
・印刷:株式会社精興社
・製本:大口製本印刷株式会社
・製函:株式会社岡山紙器所
・サイズ:h208×w157×d28mm
・スリップケース:h222×w167×d40mm
・発行部数:30部
・出版年:2019年1月25日

ルリユール:羽田野麻吏
・製本形態:パッセカルトン 総山羊革三重装
・デコール:蜥蜴革・染め紙・仔牛革
・見返し:仔牛革に染め紙のデコールとスウェード
・天金・箔押し:中村美奈子
・花ぎれ:絹糸4色 3段編み
・サイズ:h205×w160×d30mm
・ソフトジャケット:箔押し、山羊革、糊染め紙、人工スウェード
・スリップケース:山羊革、糊染め紙
・スリップケース大きさ:h212×w165×d40mm
・制作年:2021年

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『愛書家のベル・エポック』

『愛書家のベル・エポック』

『愛書家のベル・エポック』

気谷誠さんは私が尊敬する愛書家です。生前ルリユ―ルを初め、書物に関することを沢山教えていただきましたが、54歳で急逝されましたので、まだまだ勉強不足の私は単位未取得のまま現在に至っています。署名が好きでなかった気谷さんに直接お願いしたかったのですが、結局私の願いはかなえられず大変残念に思っていたところ、青猫書房の古書目録で見つけた署名と識語のあるこの本を入手したことから、気谷さんと親しかった藤井敬子さんにルリユールをお願いすることにしました。大家利夫さんに頂いた気谷さんの生前の写真を口絵写真として扉の前に入れ、更に版画が好きだった気谷さんに因んで、扉や奇数章の前などに10点の版画を綴じてもらいました。このほか、毎日新聞、銀花、彷書月刊等に掲載されていた気谷さんを偲んで寄稿された鹿島茂さん、大家利夫さん、山田俊幸さんの記事を、巻末に掲載しました。

グレーに染められた山羊革とローマ漉き紙のスリップケースとシュミーズから本体を取りだすと、同系色の山羊革の表紙の上下に仔牛と山羊の革でモザイクされた8色の大小の長方形が目を引きます。その表紙を開くとグレー色の仔牛革と私の好きな小石系の流れるようなマーブル紙の見返しが現れます。綴じ込んでもらった版画は私の大好きなものばかりで、貴重な一冊となって本棚を飾っています。

原本書誌
・著者:気谷誠
・発行者:小川道明
・装幀:熊谷博人
・発行所:株式会社 図書出版社
・印刷:明和印刷株式会社
・製本:小高製本工業株式会社
・サイズ:h190×w126mm
・出版年:19931031

ルリユール : 藤井敬子
・綴じ込み作品:辻憲、柄澤齊、坂東壯一、Albin Brunovsky、佐藤暢男、塩崎淳子、山本六三、猪飼正、高田美苗、胡子修司のオリジナル版画
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン(綴じつけ製本)
・綴じ:5本の麻紐支持体 麻糸綴じ
・表紙:8色の仔牛革と山羊革によるインレイ、オンレイモザイク
・見返し:仔牛革とマーブル紙
・はなぎれ:2色の絹糸による手編み
・箔押し:大家利夫(本金)
・サイズ:h193×w136×d29mm
・シュミーズ:山羊革 ローマ手漉き紙
・スリップケース:山羊革と手彩色ローマ手漉き紙 h203×w144×d37mm
・制作年:2010

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