Ⅵ-20 『LE PETIT PARISIEN』

石川順一さんは愛書家で読書家です。普通愛書家は自分の好きな作家の書籍や貴重な書籍を蒐集しますが、集めた書籍を読むようなことはしません。従って石川さんは大変稀有な方です。彼は墨田区東向島で書斎を運営しています。この書斎の本棚に並ぶ書籍は古今東西多種多様の分野のもので、中には大変貴重なものもありますが、彼にお願いすると手に取ってみることが出来ます。この書斎では誰でも挽き立てのコーヒーをあるいはビールなどを飲みながら書物を繙くことができる気持ちの良い空間です。彼は書籍ばかりではなく、蔵書票にも造詣が深く、その話しぶりに魅せられて話の中にのめり込んでゆくことが多々あります。
その彼が2022年に一冊の書籍を自費出版しました。『LE PETIT PARISIEN』という彼の書斎名をタイトルとしたものです。表紙、紙、フォント等々にこだわり尽くした一冊となっています。彼の本書に対する思い入れとこだわりは、本書の企画・制作を担当した川鍋昭彦さんによる巻末解説に詳述されています。
そして簡易製本された本書を各人が好きにルリユールし、これらを書斎に持ち寄って展覧会をしようということとなりました。私は製本が出来ませんので製本家の藤井敬子さんにルリユールをお願いして出品しました。
展覧会は2023年12月3日から書斎で開かれました。高橋千裕さん、宮島亜紀さん、赤井都さん、細野智光さん、辻村和美さん、恩田則保さん等々十数名の手になるそれぞれの『LE PETIT PARISIEN』が並べられ大変見応えのある展覧会でした。
余談ですが、石川さんのこの書斎は作家の深沢七郎さんがかつて今川焼屋「夢屋」を開いていた同じ場所です。「夢屋」の包装紙はあの横尾忠則さんがデザインしたことでも有名ですが、ネットオークション等でこの包装紙をたまに見かけることがあります。

Ⅵ-16
原本書誌
・タイトル:LE PETIT PARISIEN
・著者:石川順一
・発行:LE PETIT PARISIEN
・企画:パンオフィス 川鍋昭彦
・印刷・製本:東海印刷/恩田製本所 恩田則保
・組版・製版:宮島亜紀/協進社
・サイズ:約h200×w137mm
・発行部数:500部
・出版年:2022年2月13日

ルリユール
・製本形態:プラ・ラボルテ製本
・デコール:仔牛革、山羊革
・見返し:マーブル紙(IL PAPIRO)
・タイトル:箔押し(藤井敬子)
・花ぎれ:手編み花ぎれ
・サイズ:h205×w148×d35mm
・ソフトジャケット:レザック紙、人工スウェード
・スリップケース:手彩色マーブル紙、山羊革
・スリップケース大きさ:h211×w153×d38mm
・制作年:2023年

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