執筆者 江副 章之介 | 10月 29, 2022 | 未分類
「第2回 レイミア プレス展」を次のように開催いたします。
会期:2022年11月6日(日)~19日(土)*水・木曜日定休 13:00~18:00
会場:LE PETIT PARISIEN 東京都墨田区東向島 2-14-12 Tel:03-3612-9961
第54回造本装幀コンクールで『林由紀子作品集 1997-2019 ペルセポネー 回帰する植物の時間』が日本印刷産業連合会会長賞 印刷・製本特別賞を受賞いたしました。この受賞を記念して本書の特装版と普及版、林さん所蔵の作品(鉛筆画、ペン画、銅版画)を展示すると共に、アルフォンス イノウエさんの銅版画と、これまでレイミア プレスで出版した書籍などを展示販売いたします。
「出品作品のご案内」をご希望の方は、レイミア プレスまでご連絡下さい。メールアドレスは、lamia_press@yahoo.co.jp です。
併せて初日15時からは、『林由紀子作品集 1997-2019 ペルセポネー 回帰する植物の時間』の製本を担当した帳簿造り3代目職人の恩田則保さんに本書製本に関するお話をしていただきます。その他、最近完成して届きましたルリユール本をご紹介いたします。
皆様のお越しをお待ちいたしております。
執筆者 江副 章之介 | 2月 10, 2022 | 未分類
『林由紀子作品集 ペルセポネー 回帰する植物の時間』の特装版に綴じ込む5点の彩色銅版画と27点の彩色鉛筆画のほか、本書普及版刊行後に確認された作品等全67点の作品を掲載した『補遺集』が、所蔵者や画廊の方々からご協力をいただきながら、このほど完成いたしました。この『補遺集』は特装版と未綴じ版には追加されますが、すでに普及版をお持ちでご希望の方々には実費1,000円(税込)でお分けいたしますのでご連絡ください。
執筆者 江副 章之介 | 6月 25, 2021 | 未分類
日本書籍出版協会と日本印刷産業連合会主催の第54回造本装幀コンクールに応募した461点の書籍の審査が2021年6月に実施されました。その結果、『林由紀子作品集 1997 – 2019 ペルセポネー 回帰する植物の時間』が「日本印刷産業連合会会長賞 印刷・製本特別賞」を受賞することが決まりました。出版社、装幀者、印刷会社、製本者が表彰されそれぞれ賞牌が授与されることとなりました。ひとり版元が出版した書籍が、このような賞を受けることが出来るとは、大変名誉なことであるとともにとても嬉しい限りです。これもひとえに作家、印刷所の方々、装幀者、製本者の皆さまのお蔭だと大いに感謝しているところです。すなわち、この受賞は林由紀子さん、布下創一郎さん、横田惇史さん、田中秀和さん、古市久志さん、恩田則保さんのご協力とご努力のたまものだと大いに感謝しています。これからも初心を忘れないで、たくさんの方々から喜んでいただける美しい本造りに努力してまいる所存でおります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2021年6月
レイミア プレス 江副章之介

執筆者 江副 章之介 | | column
私に限定本や特装本、ルリユ―ルの魅力を教えてくれたのは気谷誠さん、大家利夫さん、武者統夫さんです。気谷さんからは「本は五感で読むものです」と、大家さんからは「本は自分でつくるものです」と、武者さんからは「普及本と限定本・特装本・ルリユ―ルとは大きく異なる。希少な本での読書は至福の時を感じる」ということを教わりました。
三人から聞いたことをじっくり考えた結果、自分では出来ないものの製本家に製本を依頼するということ、そして版元を立ち上げて自分の好きな本を少部数出版するということが、本(造り)の魅力なのではないのかという自分なりの結論に達しました。
ここではルリユ―ルの魅力を知ったきっかけと、愛書家・気谷さんの思い出を記しておきたいと思います。
私が気谷さんに初めてお目にかかったのは、1995年の大晦日、製本家で装幀家の大家利夫さんのアトリエに愛書家・製本家仲間が集った懇親会の席でした。気谷さんを初めとして山田俊幸さん、渡辺和雄さん、藤井敬子さん、近藤理恵さん、山崎曜さん、北見俊一さん、武者統夫さん、そして私は、大家さんの手作りの料理をいただきながら、夜遅くまで静かにしかし熱く書物に関して語り合ったものです。書物とは、製本とは、装幀とは、ルリユ―ルとは如何なるものか、如何にあるべきか、等々。私はただ拝聴するだけでしたが、書物の魅力と奥深さを知って、感動していました。私の目の前に「書物」という新しい世界が広がっているのを感じました。
気谷さんといえば、版画研究家であり愛書家でもあり、そしてオートバイ愛好家でもありますが、いつも思い出すことがあります。私が日本工営福岡支店に勤務していた時期に、気谷さんは琉球大学図書館に勤めておられ、私が那覇に出張した折に一度お会いしたことがあります。夕方勤務が終わり、気谷さん行きつけの飲み屋にオートバイに相乗りして行きました。美味しい泡盛を、郷土料理と共にゆっくり味わいながら、沖縄のお話をしたことを思い出します。帰路も、少しお酒が入ってはいましたが、オートバイでホテルまで送ってもらいました。その後沖縄で出された気谷さんの文集が送られてきました。南国の風を浴びてオートバイを走らせる気谷さんの姿が思い浮かぶような内容でした。
気谷さんが亡くなられたのは2008年9月22日のことで、享年54歳でした。最後にお会いしたのは、その年の3月13日、東京国際フォーラムで開催された国際稀覯本フェア初日の会場でした。一緒に会場を廻り、幾つかのお店の書物を眺め、田村書店に出されていた大家さんと藤井さんのルリユール本を見ながら、ルリユールを理解する人の少なさを嘆くと共に、これからもルリユールに興味を持ち、多くの製本家に依頼するように励まされました。気谷さんの期待にどれだけ応えられるか分りませんが、私はこれからも気谷さんが遺されたブログを一冊の本にまとめた『ビブリオテカ グラフィカ』(レイミア プレス私刊限定2部)を座右の書とし、書物の世界と深く関わってゆこうと思っています。
江副章之介
執筆者 江副 章之介 | | column
第31回蔵書票世界大会に出席するために、私は2006年8月18日に成田を発ちました。
会場は、スイスのレマン湖に面するニヨンですが、ニヨンに行く前に蔵書票作家と会うためにプラハに立ち寄りました。プラハの旧市街に宿泊し、Josef Dudek、Jiri Brazda、Marina Richterova、Vladimir Suhanek のアトリエを訪ねました。皆さんからは大歓迎を受け、作品を頂戴したり、新たな蔵書票を予約したりして素敵な時間を過ごしました。直接作家と触れ合った夢のような数日が過ぎ、いよいよニヨンへとプラハを発ちました。
世界大会は22日から始まりました。メイン会場では各国の蔵書票愛好家と作家が蔵書票の交換と作品の販売に余念がありません。私も持参した蔵書票を手にしながら、これは、と思われる愛好家に近寄り「交換しませんか?」と話しかけ、お互い持参の蔵書票を見せ合いながら交換をしました。このような方法でたくさんの愛好家との交換で、素晴らしい蔵書票がたくさん集まりました。それとまだ会ったこともなかった作家と直接交渉で蔵書票制作をお願いしたり作品を購入したりと、素敵な時間は瞬く間に過ぎてゆきます。主催者は参加者を飽きさせないためのおもてなしを色々企画しており、遊覧船でのレマン湖巡り、博物館訪問、ニヨン城などの市内観光などなど。それと毎晩ウエルカムパーティがあり、多くの人たちが会場のあちこちで交歓しあっていました。少し酔った人たちが手に手にお酒を抱えて、パーティ会場から夜のニヨン城へと繰り出し、真夏とはいえ気持ちのよい夜風に吹かれながら、愉しい歓談の余韻に浸っていました。そのような会場で、私はドイツのナタリーとラトビアのナターリアと知り合いました。ナタリーはコレクターでナターリアは作家です。二人な名前が似ていることもあり、いつも一緒に行動している仲の良い友人です。もちろん私はナタリーと蔵書票を交換し、ナターリアには新作を注文したのでした。このような素敵な大会も幕が下り、皆さんはそれぞれ自国へと帰ってゆきました。私も8月27日に帰国の途につきました。
それから4年後の2010年11月、ナタリーとナターリアが突然日本にやってきました。私たち日本の蔵書票愛好家は、二人の歓迎会を開いておもてなしをしたことは言うまでもありません。私も日本滞在10日間の内の一日をアテンドし、鎌倉と横浜のみなとみらい地区を案内しました。そのために20ページほどの英文ガイドブックを作成し、二人の観光に役立ててもらいました。
二人は10日間の日本観光を終え、台湾、香港・マカオ、中国の広州への次の旅先へと大阪から飛び立ってゆきました。
私たちが開いた歓迎会の席上で、二人の来日を記念して蔵書票を作ってくれるようにナターリアにお願いしていました。しばらくすると、彼女から見本刷りが届きました。「木の葉」というタイトルで植物の妖精フローラの周りに、歓迎会出席者のイニシャルが刻まれた色々な樹木の12枚の葉が舞っています。鳥居も描かれています。とても素敵な12人の票主の蔵書票が出来上がりました。ナターリアがこの蔵書票の制作中に東日本大震災が発生し、多くの犠牲者を出しました。ナターリアもとても心配し、私たちの安否を尋ねてきましたが、幸いにも我々のなかには被災者はいませんでした。彼女は少しでも被災者の役に立ちたいと、蔵書票の制作費代金を寄付したいと申し出てくれましたので、私が代理となって日本赤十字社に寄金しました。2011年3月下旬のことです。従ってこの蔵書票を見るたびに私は色々なことを思い出してしまいます。これはそのような蔵書票なのです。

Natalija Cernetsova (Latvia)/C3