『夢の半周』
アルフォンス イノウエさんの詩画集『夢の半周』は、レイミア プレスからオリジナル版を2008年に、印刷版をワイアートギャラリーとの共同で2010年に出版しました。元々レイミア プレスはこの詩画集を出版するために2007年2月に設立したものです。オリジナル版の企画は2006年ですから出版までに約3年掛かったことになります。フランスとイギリスの詩人による13篇の詩に、アルフォンスさんがイメージを喚起されて制作した17点のオリジナル銅版画と表紙・目次・奥附の小版画3点を加えた計20点を、原詩と和訳を印刷したトレーシングペーパーと共に未綴じで特別収納函に納めて出版しました。発行部数が25部と僅かだったために、たちまち満席となりました。再発行を希望する人が続出したため、ワイアートギャラリーと共同でオリジナル版画を1点入れて印刷版として60部出版することとしました。本書の印刷は岡山の中野コロタイプに依頼しましたが、アルフォンスさんがその印刷の出来栄えを大いに気に入り、その後『作品集』も同所で印刷することとなります。
印刷版の未綴じ本をルリユ―ルするに当たり、アルフォンスさんの銅版画を3点追加して綴じ込んでもらいました。依頼してから待つこと5年。待ちに待った「出来ましたよ~!」という連絡で、早速羽田野麻吏さんのアトリエを訪ねました。
例のごとく保護函を開けると、黒布で覆われた夫婦函には英文タイトル「MY DREAM HAS COME TO A HALF WAY」が金箔押しされ、その下には金線箔押しの曲線が描かれています。夫婦函を開いて分かったのですが、この曲線は表紙のデザインを思い起こさせるように配慮されているようです。表紙は全体を仔牛革の薄いクリーム色のパーチメントで包まれ、そこにイカロスあるいはスフィンクスの翼と思われる形状の染め紙が貼り込まれています。背を中心に表と裏の表紙を広げると、この本が翼を広げていまにも飛び上がりそうな錯覚を覚えるのは私だけでしょうか。表紙をめくると薄水色の豚革に再び蜥蜴革の翼が現れて飛翔をうながしているようです。いつものことですが、羽田野さんには私の想像をはるかに超えた装幀デザインで驚かされてしまいますが、私にはそれを期待している面も大いにあるように思います。
原本書誌
・著者:アルフォンス イノウエ
・付属作品:新作オリジナル銅版画「クリスタベル12」を巻末に綴じ込み
・装幀:角背上製本、アルフォンス イノウエのデザインによるハードカバー
・サイズ:h275×w240×d12mm
・スリップケース: h281×w242×d18mm
・発行:レイミア プレス & ワイアートギャラリー
・レイアウト:平野奈巳
・発行部数:60部
・出版年:2010年11月20日
ルリユール:羽田野麻吏
・綴込み作品:アルフォンス イノウエによる銅版画2葉、蔵書票1葉
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり(麻紐支持体5本)
・表紙:パーチメントに仔牛革と染め紙・蜥蜴革・パラジウム箔押しのデコール
・表紙内側見返し:豚革に蜥蜴革とパラジウム箔押しのデコール
・見返し:染め紙
・はなぎれ:5色絹糸三段編み
・箔押し:中村美奈子
・サイズ:h271×w238×d17mm
・夫婦函:h285×w250×d25mm
・制作年:2018年