『坂東壯一蔵書票集』

レイミア プレス4冊目の出版物です。特装版に新作蔵書票5点を綴じ込むために5名の票主を募集し、テーマを提示してもらい坂東さんに作っていただきました。票主の希望のテーマはそれぞれ「DON QUIXOTE」「ダイヤモンド」「湿原の蘭」「旅の終り」「MEMENTO MORI」でした。「蔵書票が完成したら、下絵はすべて廃棄する」と言われたので大いに驚き下絵も提供していただき、票主に渡したところ大変喜んでもらいました。今回も羽田野さんにルリユ―ルをお願いしました。

白段ボールの保護函を開けると黒を主体とした染め紙と茶と黒の模様の染め紙が貼られている夫婦函が現れます。その上にレモン形の黒染め紙に作家名とタイトルが金箔押しされて光っています。それを見ると次に現れる書物全体の様相が想像されるようです。夫婦函を開けると表紙全体が黒に染められたしぼの美しい山羊革で包まれ、表表紙には幻想的で不思議な形状が胃袋革と蜥蜴革と染め紙でデザインされているのが目に入ります。このデザインのテーマは「MEMENTO MORI」だとお聞きしました。表紙を開くと落ち着いたグレー系の仔牛革と茶系の染め紙による見返しです。色とりどりの糸で編み込まれた三段のはなぎれが彩りを添えてくれています。

羽田野さんのルリユ―ルは表紙のデザインだけではなく見返しにも見所があります。私は素人なのでよく分かりませんが、ひと工夫もふた工夫もされているように思えます。保護函から出し夫婦函を開いて本体を初めて見た時、そして表紙をめくって見返しを見た時の依頼者の驚きの顔や、満足して悦に入った顔を思い浮かべながらデザインされているのではないか、と私は勝手に想像してしまいます。要するにルリユールとは、書物の表紙、見返し、はなぎれ、小口装飾、それを包むシュミーズ、スリップケース、夫婦函など、その書物全体を一つの美しいオブジェへと変身させる総合的なビブリオ アートだといえるのではないでしょうか。

坂東さんには今回のルリユ―ルに綴じ込むために、これまで作っていただいた私の蔵書票を特別に刷ってもらい、おまけに手彩色までしていただきました。もちろん「MEMENTO MORI」の下絵のほかに坂東さんのイニシャルを手描きしたロゴも併せて綴じ込んでもらっています。素敵なルリユ―ル本がまた一冊本箱に加わりました。

原本書誌
・著者:坂東壯一
・付属作品:坂東壯一オリジナル蔵書票5葉
・版画集撮影:江副良介
・組版:中島悠子
・レイアウトと製本:北見俊一
・印刷:イニュニック
・発行所:レイミア プレス
・サイズ:h263×w188×d26mm
・スリップケース:h270×w193×d35mm
・発行部数:25部
・出版年:2014年3月15日

ルリユ―ル : 羽田野麻吏
・ルリユ―ル綴じ込み作品:坂東壯一による手描きロゴ、蔵書票下絵、銅版蔵書票3葉
・仕様:総革装
・製本形態:パッセ カルトン
・綴じ:本かがり(麻紐支持体5本)
・表紙:山羊革に染め紙と胃袋革・蜥蜴革によるデコール.
・表紙内側見返し:仔牛革
・見返し:染め紙
・はなぎれ:7色絹糸三段編み
・箔押し:中村美奈子
・サイズ:h265×w190×d25mm
・夫婦函:h276×w201×d35mm
・制作年:2016年

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