『藤枝静男と私』

郷里を同じくする藤枝静男さんと小川國夫さんは昔から親交があり、講談社から『藤枝静男著作集』全6巻が刊行された時、小川さんが全巻の解説をされたのは至極当然なことでした。この著作集に対する藤枝さんの思い入れは大変強く、全巻に署名しているだけではなく自作の陶印を二顆ずつ捺しているという熱の入れようです。本書はこの全巻解説の他に藤枝さんについて書かれている小川さんの文章のほとんどが一冊にまとめられたものです。柄澤齊さんが藤枝さんと小川さんの肖像を木口木版画で作品化されていることは知っていましたので、二人の版画を分けてもらうようにお願いしました。大きさが随分異なるので、一緒に綴じるにはふさわしくない、ということで藤枝さんの肖像画だけを綴じることにしました。同じく綴じ込んだ坂東壯一さんの蔵書票は、小川さんの作品用として制作を依頼したものです。それは、韻文叢書から出版された小川さんの作品の全てに、坂東さんの銅版画が綴じ込まれていて、小川・坂東コンビは切り離せないと思ったからです。このように本書は、藤枝静男さん、小川國夫さん、坂東壯一さん、柄澤齊さんという私の大好きな四人がコラボしている大切な一冊なのです。

このように私の想いが入ったこの本を近藤さんは、クリーム色と茶色と焦げ茶色の3色の革でバランスの良いコンポジションにレイアウトしています。この装幀は見返しと函の色合いとも相まってとても落ち着いており、しかも目に大変やさしい配色となっていて大いに気に入っています。

 

原本書誌
・著者:小川國夫
・発行者:長谷川郁夫
・発行所:株式会社小沢書店
・印刷:図書印刷㈱
・製本:大口製本
・サイズ:h190×w131×d15mm
・出版年:平成51993)年1120日 

ルリユ―ル : 近藤理恵
・綴じ込み作品:柄澤齊による木口木版画「藤枝静男」、坂東壯一による蔵書票、小川國夫の署名紙
・仕様:総革装
・製本形態:綴じつけ製本
・綴じ:支持体に糸綴じ
・表紙:茶山羊革、平にクリームと臙脂の山羊革の切り替え
・デコール:インレイ モザイク
・見返し:ノド革、臙脂色紙
・はなぎれ:編みはなぎれ
・箔押し:近藤理恵による表紙のモザイク上にタイトル・作者名の箔押し
・サイズ:h196×w138×d20mm
・夫婦函:外布、内紙貼り h212×w152×d27mm
・制作年:2004

 

 

 

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