アルフォンス イノウエ 銅版詩画集

01.『夢の半周』-オリジナル版-

2006年5月21日、「アルフォンス井上先生詩画集企画書」を手にアルフォンス イノウエさんのアトリエを訪ねました。その後、たび重なる打ち合わせを経て、アルフォンスさんがそれまでたくさんのフランスとイギリスの詩を愛読し、触発喚起されて制作してきた作品群を、詩とともに掲載する本を出版することが決まりました。当初の書名は『恋 歌 – あるいは死のオード – 』でしたが、内容が具体的になった段階で、『夢の半周』に変更されました。

掲載する詩はMarceline Desbordes – Valmore、Paul Verlaine、Christina Geogina Rossetti、Ernest Dowson、Joyce Mansour、Alice Meynell、Albert Samain、Robert Browning、Samuel Taylor Coleridgeという9人の詩人による13篇で、これらの詩にインスパイヤ―されて制作した17点の銅版画をメインに、表紙・目次・奥付用の小版画3点を加えて、計20点のオリジナルを未綴じで特別収納函に納めることとしました。

詩は原詩と訳詩を併記しています。翻訳者は、アルフォンス イノウエ、生田耕作、厨川白村、齋藤磯雄、奢灞都館編集部、関川左木夫、野口米次郎、富士川義之、堀口大學、松浦暢の各氏です。

原詩のほとんどはインターネットで検索するとすぐに確認できましたが、訳詩がなかなか見つかりません。アルフォンスさんがそれぞれの詩に対する感想を書いた「詩画集『夢の半周』によせて」に記載の参考文献が大いに役に立ちました。その訳詩が掲載されている書籍に当たるのは当然のことです。国立国会図書館、神奈川県立図書館、横浜市中央図書館、神奈川近代文学館など、ほうぼうを探し歩きました。

例えば「エヴリン ホープ」を日本語に翻訳した人は、野口のほかに、富士川、厨川、帆足理一郎、大庭千尋の四氏がいます。一つの原詩に五つの訳詩がありましたが、アルフォンスさんの希望により富士川訳を採用することとなりました。この訳詩探索には旧知の田中栞さんに大いに助けてもらいました(その経緯については、NPO図書館の学校機関誌 『あうる』No.77(2007年6月発行)掲載の、田中栞「ブラウニング『エヴリン・ホープ』の訳詩を探す」に詳述されています)。

オリジナル版画を透かして見えるように、原詩と訳詩は少し厚めのトレーシングペーパーに印刷することにしました。トレーシングペーパーと収納函の印刷・箔押しは、神戸の創文社に、アルフォンスさんデザインのカットを箔押しした特別収納函の製作は、神戸須川バインダリーにお願いしました。いずれも湯川書房本や奢灞都館本でおなじみの会社ですが、申し分のない出来映えとなりました。

本書の奥付けページには、蔵書票が摺られています。幸いなことにこの蔵書票には票主名が記されていません。そこで購読者にアンケートを取った結果、ほとんどの人から、そこに自分の名前を入れたい、という希望が出てきました。ということで、アルフォンスさんにより購読者の名前を票主名のところに書いていただくこととなりました。もちろん私も「S. EZOE」とペンで書きいれていただきました。

本書が購読者に送り届けられた後に、出版記念と少し早いアルフォンスさんの誕生日を祝って、2009年1月24日に東京は新橋に16名が集い懇親の宴を開きました。アルフォンスさんにはダマスカスペーパーナイフを一同からプレゼントすると、私たちはアルフォンスさんから自作の蔵書票を頂戴し、皆大いに満足した次第です。このようにアルフォンスさんを囲んだ、とても素敵なひと時を過ごすことが出来ました。

Photo

収録作品

  • サアディの薔薇
  • 小 曲
  • 女友達 1~4
  • 今やわれシナラの下に在りし日のわれにはあらず 1、2
  • あきらめ
  • 女十態 1~3
  • エヴリン ホープ 1、2
  • ポルフヰリアの愛人
  • クリスタベル

仕様

  • 大きさ:A3判変形、38.5×28.5cm
  • オリジナル版画20点と詩を印刷したトレーシングペーパーをケースに収納
  • ケースにはアルフォンス イノウエによるデザインのカットを箔押し

レイアウト:中村利夫
印刷:創文社
製函:神戸須川バインダリー
発行部数:限定25部
発行日:2008年11月22日
頒布価格:214,500円(税込)

在庫状況

完売